もう45年以上前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。

・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。

・暇つぶしにネタばらしブログもどうぞ→管理人ざんげ室 

隣の部屋から流れて来る安閑とした三味線と太鼓の音が話題とミスマッチで、殊更不安を掻き立てる。
同じ時間に同じ日本で起こっていることの、なんとかけ離れていることか。

「あのー、それで山崎さんはまだ出てきませんか?」

酌をしながら遠慮がちに幸がせかす。
なんだか知らないけどこの柚木さんて人、幸には必要以上の笑顔で返すのだ。
なので腰が引けてる(笑)。

きちんと正座をしてはいるが、酌をする手は片手でひょいと無造作に。
仕草がどうにも男の子っぽいんである。
酒を勧める会釈の仕方が、なんだか宴会慣れしているし。

柚木さんは案の定、嬉しそうにふぅって笑って杯を差し出しながら、

「あの人は大坂町奉行の手配で富山に居たらしい」

大坂の薬種問屋の要請で奉行所が動いたんだそうな。
高価な唐薬種をタダ同然で手に入れて商売されたのでは叶わぬ、というので薩摩組を追って富山藩に探索の手が伸びたということだ。
そこで戎三郎さんとガチンコ。
一対一だったのかお互い大勢でかち合ったのかそこまでは判らない。

だがどっちも抜け荷相手。
手を組めば良さそうなものなのに、モノが違うので足の引っ張り合いになったんじゃないか?・・・と、ここら辺りは柚木さんも想像するしかないみたい。
きっと奉行所側としては管轄外ってことで戎三郎さんの望んだようには動いてくれなかったんだと思う。

「袖の下貰わんと動かんような輩」

という常日頃の主人の御公儀(=幕府)をバカにした物言いから想像するに、大坂町奉行は、薬種問屋から賄賂を受け取ったんだろう、と柚木さんは言った。

それじゃあこっちも袖の下渡せばいいじゃん?と思ったら、密貿易はだいぶ以前からの話で、既に蝦夷地の御用商人の儲けはかなり薄くなってたんだって。
つまりワイロを使う余裕は無かったってこと。

俵屋さんにしたって、箱館の店の売り上げを除いても商売は成り立って行けたらしいから、余計なことはしなくていいということだったらしい。

戎三郎さんは年若くてまだ身代を預かる身でもなかったし、勝手に店のお金を使うことも侭ならず。
不正を正そうとひとりいきり立ってもどうにもならず、彼は彼なりに悔しい思いをしたみたい。

それに相手は薩摩藩。
幕府とてヘタに手出しをして揉め事を起こしたくなかったらしい。
幕府からの無言の圧力で、薩摩藩の密貿易はそのまま見逃す形に。

おそらくこっちの方が理由としては大きいんじゃないか?

「薩摩には目をつぶって富山には探索の手が入ったってこと?」

そんなのおかしいじゃん、と訊ねたら、柚木さんは無精ひげを片手で撫でつつ、

「形だけや。袖の下を受け取った手前、奉行所も動かざるを得なかったいうことやろ。本気で下手人を上げるつもりは無い。頃合を見計らって手を引くつもりやったんや。そこへ丁度上手い具合に邪魔が入ったいうわけや」

それが戎三郎さんだったってことか。

密貿易を摘発しようとして、逆に摘発を見逃す道具に使われたなんて・・・。
悔しいだろうな。
幕府に対して敵意があるのはそういう事情か。

山崎さんが戎三郎さんを避けているのも、そのときの負い目があるからなんだろう。
袖の下貰わんと動かんような輩側に居たわけだから。

「袖の下ねぇ・・・。ま、とりあえず新選組は袖の下では動きませんから・・・」

幸がお膳の上の鯛の骨を箸でいじくりながら、独り言のようにつぶやいた。
腐りきった幕府の支配機構とは違うと言いたいのかな。

それで、ふと思い当たる。

そうか・・・。
もしかしたら、それが新選組に入るきっかけだったの?山崎さん。

と思ってたら、

「金がなけりゃ押し借りという手も有るし」

こらこら(--;。
今ちょっと新選組を見直したトコだったのに。

鯛の残骸の中から骨の小片を引っ張り出して私にかざして見せている。

「何それ?」

「『鯛のタイ』。ほら、鯛の形してるでしょ?」

「あー!ほんとだ!かわいい」

鯛にしては尾びれが長過ぎだけど、目が丸くて大きくてかわいい。

「沖田さんに教わったんだ。あの人いつもこんなんで遊んでるから。鯛の中にも鯛が居るって言って・・・」

「おきた?新選組の沖田総司か?」

幸の話を遮って、柚木さんが身を乗り出した。
彫りの深い鼻梁の奥の目が輝いている。
沖田さんって有名人なのね。

「そうですよ」

山崎さんが新選組関係者とバレているので、もう隠す必要は無いと思ったものらしい。
幸の返事はそっけない。

「知ってるンか。どんな人物だ?腕は立つそうだが」

言われて箸を下ろした。
鯛の骨の小山の上に、おもちゃのような『タイ』をちょこんと置いて、

「あの人はぁ、・・・天才ですね」

「天才?」

「常人には計り知れません」

・・・ごめん、吹いちゃった(爆)。
幸の無表情&淡々とした言い様と、柚木さんの驚いたような呆れたような微妙な表情が可笑しくて。

「あの人を斬ろうと思ったら、自分も天才にならないと。でも天才って、なろうと思ってなれるわけじゃ有りませんからねぇ」

そこまで言ってから、残念でしたと言わぬばかりにわざとらしく、にーっと笑って見せた。
なにげに沖田さん贔屓な幸ちゃんです。

「新選組に女は入れるんかね?」

お。柚木さんが反撃だ(笑)。
幸が自分で自分を指差して確認。

「私?私は新選組なんかじゃありませんよ。新選組に女は入れません。つーか、女なんか見たらあの人達、人間じゃ無くなりますから」

くっくっく、と思い出し笑いしてる。
それでどーしてアンタ自身が無事なのか、私が聞きたいくらいだよ(--;

柚木さんがおどけたように顔をしかめた。

「人が悪い。こっちの事情をしゃべらせといて、そっちは何も話さんつもりか。姐さん達はいったい何者なんや?あちらの山崎さんとやらのイロか?家のもんか?雇われもんか?」

幸と顔を見合わせる。

「イロじゃないけどー」

「家族でもないです。雇われ者っていうのもちょっと微妙だし・・・ねー」

実際、何て答えたらいいか自分でも判らなかったし、どこまで言っていいのかも判らなかったので。

いつものテンションで「ねー」と合唱したらすぐ横の、砂色に金で模様の入った唐紙の襖がすーっと開いたので、てっきりうるさいと叱られるのかと思ったら、

「賑やかですな」

いつの間にか歌舞音曲は終わってい、芸妓さん達が左右から襖を開けたのだった。
穏やかな戎三郎さんの声にかぶせて鋭く山崎さんの声が響いた。

「アンタ、ええ加減にしいや。無駄や言うんが判らんか」

それから自分の傍らで襖を開けている芸妓さんへ、

「姐さん、そこ閉てンか。本人等ァに聞くことなんぞあらへんのやさかい」

「おお、こわい」

と、言ったのは戎三郎さんにお酌をしていた小百(こもも)さん。
それも何やらおどけた風。

襖を開け終え、後の怒声など全然気にしてなさそうにこちらを向いて嫣然と笑う百菊さんの稲穂の簪が黒髪に揺れる。

「旦那はんがお二人さんとお話したい、言うといやす」

その言葉が終わるか終わらぬかのうちに、

「実はお二人にお願い事が・・・」

にこやかに言いかける戎三郎さんだが、

「何も聞かんでええですよ。お食事が終いにならはったら早よ退んでくださって結構でっさかい」

と、更に山崎さんの声がかぶさり、それからは延々・・・。

「アンタは黙っとってくれ。アンタには頼んどらんのやさかい。私はお二人に・・」

「お二方には関係の無い話やないか!」

声を荒げた。
戎三郎さんはまだ余裕で、

「口挟まんでもらいたい言うてるのや。私が用の有るんはこちらの娘さん方や。アンタこそさっさと退んでくれたはったらええよって」

憎々しげに受け流す。
でもだんだん関西弁度(笑)が強くなってる。

「あほぬかせ。話があるから来い言うたんはお前やないか」

「ほお。お前呼ばわりか。こらえらい身分になったもんやな」

鋭く言い放ち、挑戦的に鼻で笑った。

彼はたぶん山崎さんより年は若いんだろう。
だから山崎さんも「お前」という言葉が出てしまったのだろう。
だが相手は名のある大店の若隠居。
言われて我に返ったのか山崎さんはフンっと鼻から息を抜いて、それでも相手のナマイキな物言いに腹は立っていたと見え、自らへりくだる事はせず、

「とにかく、この二人を馬鹿げた話に引きずり込むのはやめてくれ」

気を取り直したように一旦、東言葉になりかけたのだが、

「馬鹿げた話?」

という、相手のとぼけた態度にキレたみたい。

「馬鹿げとるわ!頭おかしンちゃうか自分?こん子等を勝手に茶番に引きずり込むんやない言うとんじゃ!」

あーあ、こめかみに青筋立ってるし。

「茶番やと!」

「茶番やから茶番や言うたんやないかい!」

「お前に茶番言われたないわ!」

・・・不毛(--;
子供の喧嘩になってる。

「なんやと!お前にお前言われたないわい!」

あーっ!もうっ!

「うるさーい!いい加減にして!二人とも大人なんだから子供みたいな口喧嘩しないの!」

小夜の独擅場だったな、と後から幸が笑ったっけ。
立ち上がって叫んだ剣幕にみんなが黙った頃合を見計らって、

「とにかく事情を聞きますっ。そのためについて来たんだから。自分達の知らないところで自分達が喧嘩の種になってるなんて私は嫌だからねっ!判断は自分でします!」

それからひとつ深呼吸をして、まだ何か言いたげな山崎さんへ、

「守ってくれる気持ちはありがたいけど蚊帳の外にはしないで。もちろん、山崎さんが抱えている程の責任なんて私達には背負えるわけないけど、でも私達だってあなたの背負ってる荷物の重みくらいは知りたいの」

ぐっと、彼の口元に力が入った。
目を合わせない。こちらを見ない。
こめかみが動いている。

「私何か間違ったこと言って?」

「いえ・・」

言葉ではそう言ったがまだ不満げな表情だ。
逆に戎三郎さんの口元には笑みが戻り、

「泣かせますな」

・・・調子に乗るなっつーの。
山崎さんを抑えたのは彼が身内だからであって、あんたに味方したわけじゃないんだ。

「余計なことは言わなくていい。あんたが勿体つけてるからこんな展開になってるんでしょ!さっさと事情を話してちょうだい」

あからさまに不快感をぶつけられて今度は面食らってる。
山崎さんが伏せていた目を相手に向け、してやったりと鼻で笑った。

「えらい威勢のいい姐さんやな」

ぼそぼそと柚木さんの声が聞こえている。
それに答える幸の声も。

「最強ですから」

・・・なにそれ(憤)。
なのでちょっと大人しくしていようと後悔しかけた時、

「あんたいったい何者や?」

困惑した面持ちで戎三郎さんが見上げている。

我々三人の中で一番目上と思っていた(実際そうだけど)山崎さんをひっくるめて頭ごなしに怒鳴りつけたんだからそう思うのも無理は無いけど、でも私としてはそんなことはもう山崎さんから聞き出していたものと思っていた。
だってそんなの基本的なことじゃないか。
なので思わず、

「あなた、そんなことも知らないで私達に何を頼もうと思ってたの?」

山崎さんがくくくく、と下を向いて笑い出した。
戎三郎さんの顔が赤くなった。
恥をかかせてしまったらしい。

「すいません。余計なこと言っちゃったみたい」

「やっぱ最強」

幸に突っ込まれた(爆)。


そこまで言ったからには名乗らないわけには行かないと思ったし、名乗った方が相手はあきらめてくれるのかと思ったんだけど、山崎さんはどうしてもそれだけは避けたかったようだ。
後からどこでどう利用されるか、相手に信用を置いてなかったのだ。
なので周りのブーイングを無視しつつ、お姐さん方には席を外してもらって、戎三郎さんの話を聞く。


薩摩の密貿易担当の大物が、京都に来ているそうな。
この男を捕らえ、動かぬ証拠として薩摩の密貿易を明るみに出したいという。
その方法を考えたから手を貸せというのが彼の言い分。

「今更捕まえてどないなるちゅうねん。去年の秋から俵物も勝手商い差支え無しちゅうて、抜け荷も公儀御用達も無うなってしまったのやないか」

開国以来、諸外国の要請で暫時貿易の自由化は進み、俵物も例外ではなくなった。
幕府独占で長崎港のみで輸出されていたものが、昨年秋から交易自由となったのだそうだ。

つまり、これまで密貿易とされていたものがそのまま正規の貿易としてまかり通るようになってしまったんである。

これは普通に考えれば貿易の望ましい形なんだろう。
ご禁制を破り続けてきた薩摩はこの期に及んでお咎め無し。
やったもん勝ちだ。万々歳だ。

しかし戎三郎さん側からすれば、正直者がバカを見たんである。

幕府の監督の下に居て、傍らで密貿易で暴利をむさぼっているのを目の当たりにしながら、しかもそれによって自分達の利権を脅かされているにもかかわらず、文句も言わずに決められた商売を続けることを強いられて来たんである。
報われもせず。

無念の気持ちはよく判る。
だが今更一商人が動いてどうなるものでもないのでは?とも思ってしまうのは確かで。

「そんなんアンタひとりの気晴らしちゃうんか。暇持て余したお大尽の茶番や」

先程立ち回りで活躍した自前の煙管で煙草を吸いつけて、山崎さんが皮肉った。
戎三郎さんがまたムキになる。

「島津に油揚げさらわれたまんま、泣き寝入りしろ言うんか。薩摩の芋侍に丸儲けさしてアンタ等は何とも思わんのか。ヤツラその金で何やってる思うてんねん。イングランドから大砲買うてんのやぞ」

イングランドという単語が出て来るなんてびっくり。
内容が内容なので、柚木さんも幸も、辺りの様子を窺うような気配を見せた。

山崎さんは挑発に乗らない。
否定もしないのはどういう意味なのか。

口からモアンと浮かんで出た白い煙をまた鼻から吸い込んで、最後に言葉と一緒に吐き出した。

「アンタが憎い島津にひと泡ふかしてやろ思うとんのやったら勝手にそうしたらええわ。けどな、それとウチ等は関係あらへん」

「買うた大砲、何に使う気ィか判っとんのか。毛利討つとでも思うとるんか?島津がどないな動きしとるか、アンタ判ってへんのやろ」

話が政治向きになってきた。
山崎さんは黙っている。
だが、広島探索(あるいは長州探索)帰りの彼はたぶんここにいる誰より薩長の動きを知っているはずだ。

煙管を叩いて灰吹きに灰を落とし、

「・・・こっちのことはどうでもええ。それよりアンタ、ほんまにやる気か。一介の商人(あきんど)風情が大名相手に後ろ盾も無く。痛い目見るだけや思わんのか。商人なら商人らしゅう、金儲けだけ考えとったらええのやないか。好き好んでそないな儲からん話。商人らしゅうもない」

それまでの皮肉っぽい話し方ではない。
諭すような落ち着いた重みが有った。

戎三郎さんの、せめて過去の不正を正したいと思う気持ちは判らぬではない。
でもそれを何らかの行動で現すということは、商人という人種には出過ぎた行為なのだと山崎さんは言っているのだ。
万が一のリスクが大き過ぎる。

「商人らしゅうない・・・か。この気性が実家の義母を恐ろしがらせとるんやろな」

ふっと、こちらもそれまでの力みが消えた。
彼の家の事情は私達には判らないが、何か含みのある言葉で有るのは判った。

雪洞の灯りにさえ透けて見える栗色の髪とビスクドールのような質感の肌。
長いまつげを伏せるようにして塗りの銚子から自酌している手も白くしなやかで、憂いを含んだ表情が壮絶に綺麗だった。

「・・・なに、痛い目見たかて己ひとりや。そのために隠居したようなもんやさかい。隠居が勝手にやったこと。隠居料はたいて道楽につぎ込むだけの話や。店に迷惑はかからんよう、上手いこと逃げたらええ。向こうかて叩けば埃の出る身ィやさかい、ヘタには動けへんやろ」

投げやりな口調が却ってしんみりと聞こえたのは私だけかな。
みんな黙ってしまったのは、みんなもそう感じたのかな。


雪洞の蝋燭が燃える音が聞こえる程の沈黙。
静かで冷静な山崎さんの声がそれを破る。

「ならこっちの二人を巻き添えにせんかてええはずや」

二服目を吸い付けた。
杯から一口酒を含んだ戎三郎さんが、艶っぽく濡れた唇をゆがませて自嘲気味に笑った。

「嫌われたもんやな。けどな、アンタには貸しがあるはずや。手ェ貸してもらわれへんのやったら、そっちの貸しを返してもらわなならんなぁ」

そうだ。それ、私も気になってた。
その貸しって何?
山崎さんがこの戎三郎さんを無下に出来ない理由は何なのか。

「貸した家、返してもらおかー」

・・・貸した家?

杯を空け、再び自酌する。

「間に人立たはったってな、ちゃんと調べはついてるのやさかい。うちの先々代が使うてはった家、新選組の偉いさんの私宅になってるちゅう話やないか」

・・・え?それってもしかして。

「あの家は私が貰い受けることになってあったんや。それを私の留守してる間に、それこそ押し借り同然に勝手に使いまわして・・・」

「あのー」

確かめようとしたら、山崎さんが煙管を手にしたまま、ぐっと目を閉じて見せた。
それってやっぱり私んちってことか。
それを言うなってことね?

「もし、さっきの計画を手伝うとしたら私等は何をすればいいんですか?」

誤魔化しついでに聞いてみる。
これがまたとんでもない話だった。



ターゲットは男色趣味なんだって!(驚)
薩摩人には多いそう!(そうなのか?)。
それで色子と(陰間とも)いう、歌舞伎役者の卵(バイトで体も売る!爆)をエサにおびき出そうという計画なんだそうだ。

宮川町は色子を置く店も多くあって、今日はそれを物色するために来ていたんだそう。
人探しってそういうことだったのね(汗)。
で、去年の祇園の火事で仕事場をなくした役者達が色子として多く働いているので、適任者がみつかるだろうと思っていたんだけれど、もしこの町の店に出ている彼等を使って万が一何かあった場合、後々店に迷惑がかかるんじゃなかろうかと思い至ったらしい。
それは避けたいと断念しかけた時、私らに出会ったというわけなのだが。

でもそれが何故問題の解決になるのか?

「幸さんなんぞ、そのまま色子で稼げますわな」

そういうことかい!(爆)。
名指しされて幸が青くなった(私は笑ってたけど)。

「じょ、冗談!私はこう見えても女ですから!」

うぷぷ。
幸が女をアピールしてるぞ!(悶絶)。

「判ってます。危ないことはさせまへん。色子に見えればそれでええのや。相手を油断させるだけでええんです。気を引いてもらえばええのやから。それに・・・」

幸の中性的な美貌が気に入っていたらしい。
戎三郎さんはニッコニコ。

「相手は女子には興味の無い輩。危ない目ェに合うはずも無い」

幸も一瞬、納得しかけた。
でも次の一言で即刻却下。

「衣装は女形の衣装を借りてくるさかい、あんさんでも大丈夫やし」

女形の衣装を着ると聞いて、幸は頑なに拒絶した。
そりゃそうだ。
幸が女物の衣装を着るなんて有り得ないもんな・・・。

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