もう45年以上前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。

・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。

・暇つぶしにネタばらしブログもどうぞ→管理人ざんげ室 

「あのー、お願いがあるんだけど。聞いてもらえます?」

最初彼は面食らったようだった。

掌に拾い集めたあられを、火鉢の縁に置いた菓子鉢に移しながらこちらを見ている。
返事は無い。
安請け合いはしないタイプか。

じゃあ・・・ちょっと演技入りまーすv

「突然でごめんなさい。でも斎藤さんしか頼める人が居なくって・・・」

ちょっとばかし深刻な顔をしてうつむいて見せたら、多少うろたえた様子で、

「あ・・え?願いとは?俺に?・・・幸では?」

幸ィ?幸じゃダメなんだよぉ!

「ダメ、幸には内緒なの。・・・て言うか、誰にも内緒なんです」

ちょっと沈黙してみる(笑)。
そちらもちょっと沈黙。
それから、

「どうしたんです?」

膝を進めてきた。
おーし!これはイケそうv

「実は・・・」

眼を潤ませて(実際そんなに都合良く涙は出ないので、まぶたを瞬かせただけ・笑)、きっぱりと顔を上げ、

「沖田さんに会いたいの」

訴える眼!(きらきら)・・・のつもり。
が、

「・・・は?」

あれ?何だその顔は。
なんでそこで困惑するわけ?

「そんなものはいつでも会えるでしょう?」

あ、そうか(つーか、なにげに「そんなもの」と言ってるよ・爆)。
いや、そうじゃなくて。

「誰にも知られずに会いたいの。幸にも内緒にしたいの。なんとか連絡取れないかしら?」

・・・今度は愕然としてるんだけど。
そんなに難しい問題なのかなぁ。

「誰も居ないところを見計らって来て欲しいって言ってもらえないかしら?」

「ここへ?」

「だって私が外へ出ると目立つでしょ?だからここへ来て欲しいって」

「小夜さん、あんた・・・」

斎藤さん、なんだか蒼白(謎)。
でも、なんだか判らないけどここで引かれるとまずい!

「ねぇお願い。一度だけでいいの。一度だけでいいから沖田さんと二人だけで会いたいの。誰にも内緒で。ね?お願い。お願いします」

両手を合わせて拝みまくり。

「しかし・・・」

視線を合わせない。
額に汗が浮いて来るのが、見ている私にも判る。
迷っているならもう一押し!

「一度だけ会えればいいから。お願い。そう伝えてちょうだい。斎藤さんしか頼める人居ないのよ。幸じゃまずいの」

「そりゃそうだろうが・・・」

お願いよ~!と腕を掴みかけたらかわされた。

「いや、・・・承知しかねる」

立ち上がった。
え?うそ?断るの?

「斎藤さん!」

「悪いが、承知するわけにはいかない」

大刀を手にし、縁側に下りかける。

「ちょちょっと待って!出来ないなら仕方ないけど、今の話は誰にも内緒にしてちょうだいよ!それだけはお願いよ!」

「当たり前だ。こんなこと、・・・誰に言うか!」

吐き出すように呟いた。
もしかして怒ってるの?
なんでー?

「あの・・」

訳を訊ねようとするのを制し、背を見せたまま刀を腰に差して、

「あんたが何を考えているのか知らんが、あの人はあれから島原に通い詰めだ。話を伝えたところで会いに来るとは思われん。諦めた方がいい」

え?
どういうこと?
あれからずっと、あの照葉さんって人に会いに行ってるってこと?

もっと話を聞きたかった。
でも、まだ雨は降っていたのに、傘を持って行ってと言ったのに、斎藤さんは止めるのも聞かず振り返らず、髷を乱して駆けて行ってしまった。

どうやら機嫌をそこねたみたいだ。
困ったな、失敗か。

沖田さん一人ここに呼ぶのがそんなに難しいことだなんて思えないけどなぁ。
そんなに無理なお願いだったかなぁ。

でも怒ることないじゃんねぇ。

それにしても、あれから毎日通ってるって、・・・どうなのよ?沖田さん。




諦めていたのに、沖田さんはやって来た。

「どうもー。呼ばれて来ましたぁ。誰も居ませんかぁ?入っても大丈夫ですねぇ?」

幸が屯所へ出勤?して行ったすぐ後だった。
島原へ行った日から数えて七日目ぐらいだったか。

そろそろと庭に入ってきながら首を伸ばしたり引っ込めたりして辺りを窺うのは半分面白がってる風。

掃除をする手を止めて出て行くと、

「先日は災難でしたねぇ。風邪は治りましたか?ハイ、お土産。栗饅頭はお好きで?」

紺地に細かい十字絣の綿服の懐から、竹皮の包み。

「お!やったー!ありがとう」

早速開けて、その場で一口。

「うん、イケる。上品な味!」

「でしょう?島原に出てる菓子屋なんですよ。意外でしょ?」

島原の菓子屋・・って。

噴きそうになったのを無理矢理飲み込んだら、今度は喉に詰まりそう。
胸をとんとん叩きながら、

「なに?・・今買って来たの?」

「そうですよぅ。島原から朝帰りです。オツですねぇ。私も一人前の遊び人になりましたね」

・・・だめだこりゃ(--;



彼は何も隠さなかった。

あの日から毎日島原に出かけていることも認めた(それもほとんど入り浸り)。
あの日と同じ店に通っていることも認めた。

それが噂になっていることも。

「それを訊いてどうするんです?島原通いをやめさせようとでも?この年になってねぇ遊びを覚えたらあなた、なかなかやめられませんよぅ?」

「ふざけないで」

心配しているのが馬鹿馬鹿しくなってくるようなおどけ方。
アルコールは入っていないようだけど。
天然なんだな。

「誰かに何か言われましたかぁ?いや、頼まれたのかなぁ?」

手間を惜しんで菓子鉢にも取り分けず、長火鉢の縁に置いた竹皮の包から、栗饅頭をひとつ、口に放り込んだ。
細面なわりにはがっちりしたアゴが、忽ちそれを粉砕していく。

その間も、おどけた笑顔を作ったまま。
ここに呼び出されたことを不審には思っているようだ。

彼の道化に付き合ってる暇も無いし、ここは単刀直入、

「島原の馴染みの名前は照葉さんと言うのでしょ?」

するとどうだ、彼は一瞬固まって、それから徐々に笑顔から誇張が消えていった。

ガードが消えたのだ。
殊更笑顔を繕って、身構えていたんだね。

「小夜さん、やっぱりあそこに居たんですね」

声の調子も柔らかい。
まるで労わるような笑顔だ。

穏やかな表情に、なんだか胸が詰まる。
うんうんと頷くしかできない。

「じゃあ、私の話を聞いてたんですよね?」

うんうん。

「私が肺腑の病だってことも?」

うんうん。

「どんな病かも知ってる?」

うんうん。

「困った人だなぁ・・」

と、首をかしげ、眉をハの字にして苦笑する。
その表情がとてつもなく優しい。
鼻の奥がつーんとなって、目が熱くなる。

「盗み聞きは良くないですよ」

「・・だぁって・・!」

自分でも驚くほど泣き声になっていた。

「あんな話してる所に出て行けないじゃない・・・」

沖田さんの驚いた顔も涙で滲んで見えた。

「あーあー、泣かないで下さいよ、もう」

懐から手拭を出して、私の顔を拭いてくれる。

「だって・・・ずっと我慢してたんだもん」

そうだ。
ずっと泣きたかったんだ。
あれからずっとだ。
ずっと苦しかった。

これでようやく泣ける、と手拭を受け取ってさめざめと泣こうとした時、

「それで、信じたんだ?」

・・・え?何?

「私の話を信じたんですね?」

そりゃ・・・そうだよ?
それが何か?

「あー、そうですかー。それは困ったな」

なんで?
何が困るの?

頭を掻いてるぞ。

「あれはねぇ、方便です」

・・・へ?

「方便。方便なんです」

・・・なんですと?

「ほ・う・べ・ん。嘘ですったら。信じちゃいけませんよぅ」

嘘??マジ?

「やだなぁ、信じないでくださいよー。私のホラなんかいつものことでしょー?」

・・・・。
騙したってこと?

「あっ!怒らないでくださいよう。カンベンしてくださいよ」

この野郎ぉぉぉおおお!!!!!

「カンベンしろだとぉ?私は、私は・・この一週間、どんな気持ちで・・・!ああああ!ムカツク~っ!!!」

キレた。
キレました。
胸倉掴みましたとも!

でも、敵もさる者、話を逸らすのも上手い。

「ああっ!ごごごめんなさい!申し訳ない!もう誰かに言っちゃいました?」

「言えるわけないでしょー!こんなこと!誰にも言えなくて一人で悩んでたのよっ!」

絞め殺してやろうかと思ったのに、

「ででも、さ斎藤さんにはなななんて言ったんです?あの人、尋常じゃありませんでしたよ?」

・・・あ、そうだった。

「事情は何も言ってないのよ。ただ、誰にも言わないで沖田さんにここに来るように言ってって・・・」

「ははぁ。じゃあやっぱりあの人、勘違いしてますね」

「勘違い?」

「だって、主人の居ない休息所に男を呼ぶんですよぅ?しかも、誰にも内緒にしてくれろとは意味深に過ぎるでしょー」

ああ!そうか。
そういうことか。
ようやく納得。
やだなぁ、それは誤解だ。

「それで斎藤さん、怒ってたんだ」

すると沖田さんはぶーっと吹き出し、

「怒ってましたか。あの人怒ったんだ・・・」

ゲラゲラ笑ってる。
腹を抱えて、畳を転げて笑ってる。

「そうなのよ。でもさぁ、そんな意味深なことを斎藤さんに頼んじゃうアタシってのもどうよ?」

我ながら可笑しい。爆笑。
久しぶりに腹の底から笑ったよ。

畳に突っ伏し、笑い過ぎてむせながら沖田さんが訊ねた。

「斎藤さんになんて言い訳するんです?」

「そうねぇ、今更信じてくれやしないだろうから、・・・誤解させたまんまで居ようかしら?」

そう言って舌を出したら、再び彼は吹き出して、

「いいなぁ、小夜さん最高!人の悪さは天下一品!」

手を叩いて笑ってる。
ご機嫌だ。

でも、何か忘れてないか?
つーか、誤魔化したつもりなのか。

「でしょう?こんな笑い話で誤魔化されるようなお人好しじゃないのよね。誰のせいでこんなことになってるか、判ってるんでしょうね?」

再び着物の襟を掴んで引き寄せる。

「あわわわ、あ、あの、ごごごめんなさい!私のせいですぅ~」

「判ってるなら一発殴らせろ~!」

「ええっ!カンベンしてくださいよぅ。今度あの、・・・そうだ、葛切りご馳走しますから。ね?ね?」

「そんなんじゃ足りない!私のこの一週間を葛切で償おうとは・・・!」

情けなさに泣きが入る。

「泣かないで下さいよ。嫌だなぁ、泣くか怒るかどっちかにしてくださいよぅ。じゃじゃじゃじゃあ、鰻でもどうですか?ねぇそうしましょうよ」

食い物から離れろよ!(爆)。



殴らせろ嫌だとドタバタやっていると突如、木戸付近で声。

「あ~っ!」

幸だ。
やばい!
なんでこんな早く戻って来るの?

てなわけで、みんなすごい顔して「あ~!」の三重奏。

なんでここに?という思いを三人三様飲み込んだのは幸の声が切羽詰ってたから。

「早く逃げて!副長が・・・!」

来るのかよ、おい!

ていうか逃げてって何?

沖田さんが居るとヤバイってこと?
斎藤さんがチクったんじゃあるまいな。
わたしゃ不倫なんかしてねぇぞ!(つーか決まった人も居ませんし・爆)。

納戸の隠し扉を使わせるわけにはいかない。
沖田さんに教えるわけにはいかなかった。
それだけは。

それが出来ないとなると、ウチは袋小路ってことになる。

「早く!今のうちに!」

下駄を突っかけて転げそうになりながら、木戸を潜ったと思ったら同じ勢いで戻って来た。
マジ焦ってる。

「来たぁ~!」

ええっ!ちょっと、どうしよう!

パニくりながら台所に隠して戸を閉めたところへ、ふんと鼻を鳴らし、

「今更隠れてどうするってんだ。往生際の悪い」

・・・バレバレ~(--;

庭で幸が成す術も無く肩をすくめて見せている。
なんでこんなところに沖田さんがいるのか、と責めているような不審げな顔つきだ。

そんなこと言ったって・・・いろいろ事情はあるんだぃ。


まったく馬鹿なヤツだとこぼしながら、座敷に上がって行く土方さんは、供に監察の島田さんを連れていた。
台所の戸に寄りかかって万事休すとため息をついていた私に会釈をして、大きな体を折るようにして縁側を上がって行く。

「馬鹿みたいに良い所に居たもんだ。鴨がネギ背負って待ってたか。総司、こっちへ来い。お前の話だ」

座敷から声がかかる。

台所の戸を開けて見れば、暗がりにしゃがみ込んだ沖田さんが、胸に抱えたフクチョーの喉を撫でながら情けなさそうに見上げている。

「まさか小夜さん、あの人と示し合わせてたんじゃ・・・」

「嫌なこと言わないでよ。さっきも言ったでしょ?誰にも喋っちゃいなかったのよ。先にあなたに確認したかったから・・」

「ですよねぇ・・」

「私の方こそ聞きたいわよ。なんでこんなことになってるの?逃げろだの・・・」

と言いかけたところへ、

「逃がすなよ!」

耳に刺さるような勢いで作業指示が飛んできた。
うんざりだ。

「・・・だのって」

沖田さんがのろのろと立ち上がった。

「まあ、いづれこうなるとは思ってましたがね」

膝からこぼれ落ちたフクチョーが一声啼いた。




「お前、近頃島原へ入り浸りだってなぁ」

話の内容は予測通り。
他人の小言を聞かされるのもぞっとしないので、

「栗饅頭食べない?沖田さんが持って来てくれたの」

こっちはこっち、と幸と小声で会話。

「来客用にはしないの?」

と、彼女は答えたんだけど、何か上の空だ。
閉め切られた襖の向こうを気にしている。

「いいよ。あっちはお茶だけで。どうせ和やかな話でもないようだし。私等だけで食べちゃえば・・・」

そこまで言った時、ひときわ高く声がした。

「俺が聞きたいのは、どうしてそんな女を落籍さなきゃいけないかって話だ」

えっ?
思わず目の前の幸を見る。

驚いてはいなかった。
心配げに眉根を寄せて、声のする襖を見つめている。

「女を持つのはいい。だがな、死にかけた女をわざわざ高い金払って受け出す馬鹿がどこに居る!」

なにそれ!
聞いてないよ!

「どういうこと?」

幸は襖を睨んだまま、

「そういうことだよ」

硬い表情は、心配しているというよりは苛立っている感じだ。

「私が今朝聞いて来た話だ」

そう言って、薄色の瞳をこちらに向ける。

「私が聞いて私が・・・チクった」

幸のこんな思いつめた顔は見たことが無かった。
そばかすの浮いた白い頬が蒼ざめて見えた。

チクった、なんて・・・そんならしくないことを彼女がするわけが無い。
なのですぐ、事情の見当はついた。

「それって仕事だったんでしょう?あの人に頼まれてやったことなんでしょ?」

あの人、とは襖の向こうのあのオヤジのことだ。

「勝手な真似は許さん」

と、いつもの怒声が聞こえている。

「へぇー、女を持つのはいいんですかぃ?」

と、こちらはいつも通りなのかどうか、ちょっと斜に構えて上げ足を取っている風。
面白がっているようでもあり、開き直りも入っているカンジ。

それを聞きながら、幸は心配げに眉を寄せているのだ。

「仕事と言えばそうなんだろうけど、断る事だって出来た。でも、私はそれを引き受けたんだ」

その言葉に、再び怒鳴り声が被る。

「そんな事ぁ言って無ぇ。そんな死にぞこないを身請けするぐらいなら、という事だ。気が違ったかてめぇ!」


「そういうことさ」

と、幸が言葉を接いだ。

「私もそれが気になってたんだよ。突然の島原通いで、朝から晩まで入り浸ってて。しかも私のことも避けていた。だからその訳を知りたかったんだ」

「でもそれは普通の反応でしょ?」

何が彼女を苛んでいるのか判らなかった。
自分のやったことを「チクった」などと、殊更卑しめる理由は何?

「知りたくて、でも手を出せないでいたんだ。プライベートな事だしね。そんな時、噂を聞きつけた副長に呼ばれて・・・。これって内輪の問題だから山崎さんが居れば山崎さんに頼んだのかもしれないんだけど、今居ないから島田さんに相談したみたいなんだ」

山崎さんはまだ西国出張から戻っていない。

「でも、島田さんじゃバレバレでしょ?」

彼は新選組一の巨漢で、その見栄えが災いして探索活動には不向きです(^^;

「だから私にお鉢が回って来て・・・。これ幸いと探り始めたわけ」

ため息をついた。
仕事として心置きなく身辺を探れた割には浮かない様子。

「でもさ、それってカッコ悪いよね。本当に心配してるなら最初から自分の意思で探れば良かったんだと思わない?」

首をすくめて苦笑した。
まあ・・・判るような気はするよ。

でも今更になって凹んでるわけはそれだけじゃなくて、

「それで目新しい情報が何も無いならそれだけで済んだんだけど、今朝、沖田さんを探しに島原へ行ったらさ、どこでどう入れ違ったんだか判らなかったけど、本人はもう出た後で、店の若い衆が話してたんだ。今、体を壊して店に出ていない照葉さんていう姐さんに身請け話が出てるって」

ああ・・・。
そうなのか。
でも、それなら何故、沖田さんはそのことを私には言わなかったんだろう?

「沖田さんの通ってるのはその人のところだってことはもう判ってたから、私もビックリしちゃって。そのまま副長に報告しちゃって。だからつまり結果的に告げ口になったってわけ」

なるほど。
仕事とプライベートがごっちゃになってて後味が悪いって感じか。

んー、どうしたもんかと考えていると、

「その対策を練ろうってことで三人でここに来たんだけどぉ・・・」

対策というのは、身請けを諦めさせようという対策であるのは既に明らか。

「沖田さんはなんでここに居たわけ?」

う。
まじい(--;

「えー?なんでかなぁ?そうねぇ、美味しい饅頭見つけたからじゃない?一緒に食べようと思って持って来てくれたみたいよ」

幸、不審顔(汗)。
こういう時、付き合い長いと困りもん(^^;



仕事とは言え、自分の目標として尊敬している相手の身辺を探って報告する、という自分の行為を恥じるのは判らないではない。
誰だってそんなことしたくないよ。

でも、誰だって師匠と仰ぐ人が不審な行動を取れば気になるだろうし、その気持も判らなくはない。

きっと一番気が重いのは、自分のした事を沖田さんに知られることなんだろう。
信頼関係が壊れるのが嫌なんだよ。
ていうか単純に嫌われやしないか心配なんだ。

さりとて言い訳をするようなヤツじゃないしな、コイツは。
きっとこのまま負い目に思って暮らすんだ。

うーん・・・。
でもなんかイヤ、そういうの。


「何をどう聞いて来たか判りませんが、私はそういうつもりで請出そうと思ったわけじゃぁありませんし、そもそもこのことは本人はまだ知らない話なんです」

沖田さんの声が聞こえていた。
あれだけ怒鳴られても、全然激した風でもない。
普段と変わらず落ち着いた声だった。

なんだか頼もしくなって、ついでにいいこと思いついちゃったv




突然、

「アンタさ、やっぱ直接話してみた方がいいんじゃない?」

とわけの判らんことを言い出して、小夜が立ち上がった。
そのままスタスタと歩いて行き、止める間もなく座敷との境の襖を開けたではないかっ!(しかも立ったままだよ・汗)。

「なんだ。何か用か」

声に風圧が有るかの様。
左手に床の間をバックにして副長、右手下座に沖田さん。
島田さんはもっと下、縁側近くに座っていた。

「茶なら後にしろ」

そりゃ、そうだよ。
誰だってそう思うさ。
それが立ったままだって、廊下を回らずいきなり横から出てったって、この場に小夜が出て行く用事なんてそれしか思いつかないもの。

でも、

「お茶なんて淹れてませんよ。どうせ飲まずにぬるくなるのに決まってるもん」

なにぃ!と副長が凄い顔になってるのもお構いなしに、彼のすぐ側、斜め前にきちんと正座をする。

何をやらかそうってんだコイツは。

副長の顔も怒ってる状態から、何か気味の悪い生き物でも見るような顔になってるし(^^;。

「今聞いたんですけど、幸に沖田さんの身の回りを探らせてたんですって?」

「ちょちょちょちょっと!小夜!」

飛び上がった。

慌てて追いかけて行き、背中を見せて座る彼女の肩を掴みかけた。
が、スルリと往なされてしまう。
鍛えてもいないヤツに簡単にかわされるなんてちょっとショック。

彼女は私が必死に止めようとしているのもお構いなしで、

「それはあなたが命じたってことよね?だから今日のこの話も、幸からあなたへの仕事上の報告事項だったのよね?」

ああっ!言っちゃってる!

沖田さんの視線が怖い。
見ないようにしていたけど、すぐ後に居るんだよぉ。
小夜の方を向いてるフリして背を向けてしまってた。

「それがどうした。まだ話の途中だ。邪魔立てするな。あっち行ってろ!」

「ちゃんと答えて下さい。幸が気にしてるんです」

もう!余計な事言わなくていいってのに!
気にしていると聞いて、副長が私を見た。

「なんだ、何か不服なのか?」

ぎゃー、こっちにまで誤解を招くじゃないか!

「違うんです。そうじゃなくて・・・」

「幸の立場も考えてってことよ。このままじゃやりにくいじゃない。敵味方ならイザ知らず。ねぇ」

ねぇ・・・って。
同意を求めるな~!私は何も頼んじゃいない。

「へー、気付かなかったな。お前が貼ってたんだぁ?」

すぐ後から沖田さんの声だ。

「すいません・・・」

消えられるもんならこの場から消え去りたいよ・・・(T-T)

「そりゃ島田さんが貼ってるわけにはいかないだろうからな」

笑い出した。
自分が笑われているようでますますトホホな状況なのに、

「ほら、沖田さん笑ってるよ?心配すること無いって」

小夜がにっこりVサイン。
その後ろで私とほぼ同時に溜息をついたのが、

「そういうことだ。判ったら引っ込め。いちいちそんなくだらんことで顔を出すな」

「くだらないってなによ。信じらんない。全くデリカシーの無い男!」

うわ、来た!(副長、デリカシー無いって言われてるよ・笑)。
まずい。
つーか、「デリカシー」って(--;
意味が判らず、副長は喧嘩を買いそこね(川柳風)。
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