もう45年以上前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。
・暇つぶしにネタばらしブログもどうぞ→管理人ざんげ室
ご笑覧下されば幸いです。
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「お国のために何をしたい、ということは・・・無いんですよね」
そう言って沖田さんは気恥ずかしそうに眉をハの字に下げ、照れ笑いをしながら赤銅色の月代を掻いた。
額に2本ばかりシワが寄った。
「近藤先生や土方さんが公方様のためにお勤めしたいというので一緒に連れてきて頂いただけなんです」
どういう話からそこに到ったのか覚えていない。
だいたい私とこの人の普段の会話なんて、いちいち記憶に留まらないくらい些細でくだらない話題ばかり、口から湧いて出るがまま垂れ流しているだけなんだもの。
この話を記憶していたのも、他の話をほとんど忘れちゃって、これが頭の中に残ってたというわけ。
土方さんとケンカしたあげく、プチ家出をしてひとりで街中をうろうろしていたところを拾われたのだった。
なにせお金を持って出なかったので、小腹がすいて途方に暮れていた。
もう家に戻るしかないか、と思ってブーたれながら歩いていたら、沖田さんの方から声をかけて来たのだ。
ここぞとばかりにタカッたのを覚えている(苦笑)。
汁粉屋で汁粉が出てくるのを待つ間のおしゃべりだった。
緋毛氈の敷いてあるバッタリ床机に並んで腰掛けている。
並んだ下駄履きの、足の色も形も全然違うなぁと、話し始めはちょっと上の空だったっけ。
彼は刀を打ち下ろす仕草をしながら、
「これしかありませんからねー私には。近藤先生や、ほかの先生方のように難しい理屈は判らんのです。剣術でしかお役に立てないので・・・」
この人は頭の悪い人ではない。
会話のセンスでそれは判る。
難しい理屈が判らないなんて方便かもー、と思っていると、彼は照れて顔を赤らめ、
「苦手なんですよ。議論するのは。しゃべるだけならいくらでもいいんですけどねぇ。それに理屈はどうであれ、私は近藤先生達といっしょに居られればいいので」
そうかなぁ?と、それでも視線を外さないで居ると、ちょっと困った(かわいらしい)表情になって、
「理屈を判ってないのは土方さんだって同じですよぉ?あの人は近藤先生のために働いてるだけなんですからー」
副長の妾ってことで、土方さんの話をすれば私が興味を示すとでも思ったんだろう。
声をひそめて、
「公方様のためなんかじゃないですからね」
にかっと嬉しそうな顔をした。
日に焼けた顔に白い歯が丈夫そう(笑)。
「そうなの?」
良く見ると鼻から目の下にそばかすが散っている。
こんなに真っ黒に日に焼けているのに、更にそばかす。
毎日街ん中歩きまわってるとこんなになるんだー。
「そおですよぉ。だって京に出てくるのだって近藤先生がそう言ったからついて来たんですからー。私と同じなんです。あの人はね、近藤先生に男惚れしてるんです」
イタズラっぽく笑った口の端がクイっと持ち上がった。
この人のこういう顔、マンガみたい。
照れて赤くなっていたのはどこへやら、目が活き活きしだしている。
「小夜さんにこんなこと言っちゃいけないかなぁ。男惚れって判ります?男が男に惚れるってことですよ?この人のためならこの身を捨てても悔いは無いっていう・・。女に惚れるのとは違いますからね?」
「判りますってば」
子供にでも説明するような口調なのは、私がそんな風に見えるってことなのかなぁ。
「そうですか?そうですよね(笑)。それでねぇ、あの人は自分が一番近藤先生を判っているって思ってるんです。近藤先生の良さは皆さんご存知なんですけど、その中でも自分は一番!って、そう思ってる。そう思って居たいんだなぁー」
可笑しそうな思い出し笑いが嬉しそうな微笑みに変わっていく。
「だから京へ上ることになったとき、土方さんは近藤先生のために自分が盾になろうと思った。陽の当たる場所に近藤先生を押し上げて、自分は縁の下の力持ちで居ようと思ったんだな。どんなことがあっても、牛若丸の弁慶みたいに最後まで近藤先生の側に居て守ろうとしてるんです」
自分の世界に入り込んでいたのに気付いて、再び照れ笑う。
「すごいでしょう?私もそうしたいと思うんだけれど、私は土方さんみたいに才が回らないですからねぇ」
だから剣で・・・か。
でも、敵とレッテルを貼られた者の中身を確かめもせず斬るなんて、そんなことが出来るものだろうか。
躊躇は無いのか。
「丸腰の相手を切るのは確かに嫌な気はしますけどー。そうでなければ全然そんなこたぁありませんよ。だって刀を以って目の前に立ちはだかるのですからね。私はそれを薙ぎ払うだけです。相手だって死ぬ覚悟はあるはずでしょう?腰に刀を帯びてるってことはそういうこってしょ?斬り合って死ぬかもしれないのはこちらも同じなんだし。ねぇ」
武士とはそういう人種なんだ、と言いたいらしい。
「武士でなかったにしろ、相手が悪党だってことは監察の皆さんが調べ上げてくれてますし。うんまあ、それでも悲しい行き違いが起こることもありますけどねぇー」
敵と勘違いして斬りつけたことも無いわけではないらしい。
「人ってぇのは刀を抜くとどうしても気が立っちゃうんですな。それを抑えきれないとどうにもおかしなことになったりする。そこは気をつけたいですハイ」
急に分別くさく真面目な顔になるのが、取ってつけたみたいで可笑しい。
「いつも冷静で居たいんですけどねー、辺りがどうにもいきり立っちゃって・・・」
また頭を掻く。
「私が落ち着いてると、なんだか余計におちゃらけてるみたいに見えるらしくて。お叱りを受けたりするんですよ。私は皆さんを抑えようと思ってるだけなのになー」
マジ心外そう。
ボケじゃないらしいのが余計可笑しい。
「刀を抜いて向かって来る相手が一概に悪党とは言えないかもしれないって思ったことは?ちゃんと話し合えば判り合える相手かもしれないじゃないですか」
そんな、彼にしてみれば失礼な質問をしているにもかかわらず、気を使って一応考える様子は見せた。
が、・・・唇が尖がってた(笑)。
「うーん。私の見たところ話す余地は無いですけどねぇー。人の話なんか聞く耳持たない感じですよ?『天誅~!』とか『公儀の犬ぅ~!』ってばっかりで」
あはは、と笑う。
「でも野良犬よりかはいいですよね?」
野良犬とはこの場合、過激派攘夷浪士のことを言ってるらしい。
なにげに負けん気が強い。
「話が通じそうな相手が居なかったわけじゃありませんけど、そういう人こそ大人しく投降なんかしてくれませんから。向かって来る者は薙ぎ払うだけです。立ち会って弱い方が死ぬ。私はたまたま生き残ってるってだけですからね」
サバサバしたものだ。剣士なんてこんなものか。
「困るのは、最初向かって来ておいて、途中で命乞いするヤツ!」
ぜんぜん困ってなさそうに、彼はあくびをかみ殺しながら伸びをした。
「そういうときはどうするの?」
すると彼は呆れたようにこちらを見て、
「今の今まで自分を斬ろうと刀を振るってたヤツですよ?気が変わったから助けてと言われて信用できますぅ?」
そうだよなぁと思った時、あっさりと
「斬りますよ」
容赦の無さにどっきり。
こんな、いつもおちゃらけて人懐こい顔をした人が、そこまで容赦の無い人だなんてちょっと信じられない気がする。
そんな私の様子に気がついて、
「そりゃ捕縛した方がいい時はそうしますけどね」
とりなすように笑って見せた。
それで、彼を傷つけてしまったかもしれないと、しまったと思った。
この人は、こんな仕事をしていながら、怖がられることを快いと感じる人ではない。
だが、そういう人でありながら非情なところを隠さず話してくれるのは、私に何か伝えたいからなんだろうと思った。
その気持ちに甘えて、更にはばかられるような質問をしてしまう。
「新選組っていつも多勢に無勢で、巷ではズルイって言われてるみたいなんですけど・・・」
各隊によってバラつきはあるようだが、一隊十人程。二隊が組で市中を巡邏するのだと聞いている。
時には別行動もするようだが、それでも敵を追う時は少なくても十人弱だ。
過激派はそんなに大所帯では市中に潜伏できないから、対峙するときは勢い多勢に無勢だ。
それを卑怯と言う向きがある。
沖田さんは苦笑した。
「敵討ちやケンカなら卑怯と言われても仕方ないですが、我々は捕縛が目的ですからねぇ。そもそも相手が無抵抗なら斬り合いにもならないわけでー・・・」
と言ってる間にお汁粉到着。
「ホラ、多勢に無勢だと相手の気を削ぐじゃないですか」
は?と、私が既にお汁粉に気が行ってるのを笑いながら、
「1対1だと向こうも勝つ見込みが有るだけに斬り合いにもなりますが、こちらが大勢だとあきらめるでしょー?」
なるほど。
お箸を手渡す。
「そこが狙いなんですよ。やたらめったら斬ってるわけじゃないんだなこれが」
箸でお椀をかき回して、
「せっかく追い詰めたのに自刃されちゃったりとかもあるんですけどねぇー、たまにね。上手く行かないですなぁ、うん」
汁粉のお餅にハフハフと喰いついた。
言ってることはすっごいシリアス&ヘヴィーだと思うんだけど、日常茶飯事な彼には汁粉のおかずなワケだな。
そこから後は・・・お汁粉とぜんざいの違いってなに?とか、こしあんとつぶあんどっちがいい?とか、白あんとかうぐいすあんってどうよ?とか、そんな話ばかりして、笑ってなかなか食べ進まなかったりした。
挙句に甘納豆の話になって、買ってあげるから家に帰れと丸め込まれ、付添われてしぶしぶ家に戻ると、ケンカのとばっちりを食ったらしい幸が留守番してたりして・・・。
沖田さんと三人で夕飯食べたこともあったなぁ、という、まぁそれだけの話。
了
そう言って沖田さんは気恥ずかしそうに眉をハの字に下げ、照れ笑いをしながら赤銅色の月代を掻いた。
額に2本ばかりシワが寄った。
「近藤先生や土方さんが公方様のためにお勤めしたいというので一緒に連れてきて頂いただけなんです」
どういう話からそこに到ったのか覚えていない。
だいたい私とこの人の普段の会話なんて、いちいち記憶に留まらないくらい些細でくだらない話題ばかり、口から湧いて出るがまま垂れ流しているだけなんだもの。
この話を記憶していたのも、他の話をほとんど忘れちゃって、これが頭の中に残ってたというわけ。
土方さんとケンカしたあげく、プチ家出をしてひとりで街中をうろうろしていたところを拾われたのだった。
なにせお金を持って出なかったので、小腹がすいて途方に暮れていた。
もう家に戻るしかないか、と思ってブーたれながら歩いていたら、沖田さんの方から声をかけて来たのだ。
ここぞとばかりにタカッたのを覚えている(苦笑)。
汁粉屋で汁粉が出てくるのを待つ間のおしゃべりだった。
緋毛氈の敷いてあるバッタリ床机に並んで腰掛けている。
並んだ下駄履きの、足の色も形も全然違うなぁと、話し始めはちょっと上の空だったっけ。
彼は刀を打ち下ろす仕草をしながら、
「これしかありませんからねー私には。近藤先生や、ほかの先生方のように難しい理屈は判らんのです。剣術でしかお役に立てないので・・・」
この人は頭の悪い人ではない。
会話のセンスでそれは判る。
難しい理屈が判らないなんて方便かもー、と思っていると、彼は照れて顔を赤らめ、
「苦手なんですよ。議論するのは。しゃべるだけならいくらでもいいんですけどねぇ。それに理屈はどうであれ、私は近藤先生達といっしょに居られればいいので」
そうかなぁ?と、それでも視線を外さないで居ると、ちょっと困った(かわいらしい)表情になって、
「理屈を判ってないのは土方さんだって同じですよぉ?あの人は近藤先生のために働いてるだけなんですからー」
副長の妾ってことで、土方さんの話をすれば私が興味を示すとでも思ったんだろう。
声をひそめて、
「公方様のためなんかじゃないですからね」
にかっと嬉しそうな顔をした。
日に焼けた顔に白い歯が丈夫そう(笑)。
「そうなの?」
良く見ると鼻から目の下にそばかすが散っている。
こんなに真っ黒に日に焼けているのに、更にそばかす。
毎日街ん中歩きまわってるとこんなになるんだー。
「そおですよぉ。だって京に出てくるのだって近藤先生がそう言ったからついて来たんですからー。私と同じなんです。あの人はね、近藤先生に男惚れしてるんです」
イタズラっぽく笑った口の端がクイっと持ち上がった。
この人のこういう顔、マンガみたい。
照れて赤くなっていたのはどこへやら、目が活き活きしだしている。
「小夜さんにこんなこと言っちゃいけないかなぁ。男惚れって判ります?男が男に惚れるってことですよ?この人のためならこの身を捨てても悔いは無いっていう・・。女に惚れるのとは違いますからね?」
「判りますってば」
子供にでも説明するような口調なのは、私がそんな風に見えるってことなのかなぁ。
「そうですか?そうですよね(笑)。それでねぇ、あの人は自分が一番近藤先生を判っているって思ってるんです。近藤先生の良さは皆さんご存知なんですけど、その中でも自分は一番!って、そう思ってる。そう思って居たいんだなぁー」
可笑しそうな思い出し笑いが嬉しそうな微笑みに変わっていく。
「だから京へ上ることになったとき、土方さんは近藤先生のために自分が盾になろうと思った。陽の当たる場所に近藤先生を押し上げて、自分は縁の下の力持ちで居ようと思ったんだな。どんなことがあっても、牛若丸の弁慶みたいに最後まで近藤先生の側に居て守ろうとしてるんです」
自分の世界に入り込んでいたのに気付いて、再び照れ笑う。
「すごいでしょう?私もそうしたいと思うんだけれど、私は土方さんみたいに才が回らないですからねぇ」
だから剣で・・・か。
でも、敵とレッテルを貼られた者の中身を確かめもせず斬るなんて、そんなことが出来るものだろうか。
躊躇は無いのか。
「丸腰の相手を切るのは確かに嫌な気はしますけどー。そうでなければ全然そんなこたぁありませんよ。だって刀を以って目の前に立ちはだかるのですからね。私はそれを薙ぎ払うだけです。相手だって死ぬ覚悟はあるはずでしょう?腰に刀を帯びてるってことはそういうこってしょ?斬り合って死ぬかもしれないのはこちらも同じなんだし。ねぇ」
武士とはそういう人種なんだ、と言いたいらしい。
「武士でなかったにしろ、相手が悪党だってことは監察の皆さんが調べ上げてくれてますし。うんまあ、それでも悲しい行き違いが起こることもありますけどねぇー」
敵と勘違いして斬りつけたことも無いわけではないらしい。
「人ってぇのは刀を抜くとどうしても気が立っちゃうんですな。それを抑えきれないとどうにもおかしなことになったりする。そこは気をつけたいですハイ」
急に分別くさく真面目な顔になるのが、取ってつけたみたいで可笑しい。
「いつも冷静で居たいんですけどねー、辺りがどうにもいきり立っちゃって・・・」
また頭を掻く。
「私が落ち着いてると、なんだか余計におちゃらけてるみたいに見えるらしくて。お叱りを受けたりするんですよ。私は皆さんを抑えようと思ってるだけなのになー」
マジ心外そう。
ボケじゃないらしいのが余計可笑しい。
「刀を抜いて向かって来る相手が一概に悪党とは言えないかもしれないって思ったことは?ちゃんと話し合えば判り合える相手かもしれないじゃないですか」
そんな、彼にしてみれば失礼な質問をしているにもかかわらず、気を使って一応考える様子は見せた。
が、・・・唇が尖がってた(笑)。
「うーん。私の見たところ話す余地は無いですけどねぇー。人の話なんか聞く耳持たない感じですよ?『天誅~!』とか『公儀の犬ぅ~!』ってばっかりで」
あはは、と笑う。
「でも野良犬よりかはいいですよね?」
野良犬とはこの場合、過激派攘夷浪士のことを言ってるらしい。
なにげに負けん気が強い。
「話が通じそうな相手が居なかったわけじゃありませんけど、そういう人こそ大人しく投降なんかしてくれませんから。向かって来る者は薙ぎ払うだけです。立ち会って弱い方が死ぬ。私はたまたま生き残ってるってだけですからね」
サバサバしたものだ。剣士なんてこんなものか。
「困るのは、最初向かって来ておいて、途中で命乞いするヤツ!」
ぜんぜん困ってなさそうに、彼はあくびをかみ殺しながら伸びをした。
「そういうときはどうするの?」
すると彼は呆れたようにこちらを見て、
「今の今まで自分を斬ろうと刀を振るってたヤツですよ?気が変わったから助けてと言われて信用できますぅ?」
そうだよなぁと思った時、あっさりと
「斬りますよ」
容赦の無さにどっきり。
こんな、いつもおちゃらけて人懐こい顔をした人が、そこまで容赦の無い人だなんてちょっと信じられない気がする。
そんな私の様子に気がついて、
「そりゃ捕縛した方がいい時はそうしますけどね」
とりなすように笑って見せた。
それで、彼を傷つけてしまったかもしれないと、しまったと思った。
この人は、こんな仕事をしていながら、怖がられることを快いと感じる人ではない。
だが、そういう人でありながら非情なところを隠さず話してくれるのは、私に何か伝えたいからなんだろうと思った。
その気持ちに甘えて、更にはばかられるような質問をしてしまう。
「新選組っていつも多勢に無勢で、巷ではズルイって言われてるみたいなんですけど・・・」
各隊によってバラつきはあるようだが、一隊十人程。二隊が組で市中を巡邏するのだと聞いている。
時には別行動もするようだが、それでも敵を追う時は少なくても十人弱だ。
過激派はそんなに大所帯では市中に潜伏できないから、対峙するときは勢い多勢に無勢だ。
それを卑怯と言う向きがある。
沖田さんは苦笑した。
「敵討ちやケンカなら卑怯と言われても仕方ないですが、我々は捕縛が目的ですからねぇ。そもそも相手が無抵抗なら斬り合いにもならないわけでー・・・」
と言ってる間にお汁粉到着。
「ホラ、多勢に無勢だと相手の気を削ぐじゃないですか」
は?と、私が既にお汁粉に気が行ってるのを笑いながら、
「1対1だと向こうも勝つ見込みが有るだけに斬り合いにもなりますが、こちらが大勢だとあきらめるでしょー?」
なるほど。
お箸を手渡す。
「そこが狙いなんですよ。やたらめったら斬ってるわけじゃないんだなこれが」
箸でお椀をかき回して、
「せっかく追い詰めたのに自刃されちゃったりとかもあるんですけどねぇー、たまにね。上手く行かないですなぁ、うん」
汁粉のお餅にハフハフと喰いついた。
言ってることはすっごいシリアス&ヘヴィーだと思うんだけど、日常茶飯事な彼には汁粉のおかずなワケだな。
そこから後は・・・お汁粉とぜんざいの違いってなに?とか、こしあんとつぶあんどっちがいい?とか、白あんとかうぐいすあんってどうよ?とか、そんな話ばかりして、笑ってなかなか食べ進まなかったりした。
挙句に甘納豆の話になって、買ってあげるから家に帰れと丸め込まれ、付添われてしぶしぶ家に戻ると、ケンカのとばっちりを食ったらしい幸が留守番してたりして・・・。
沖田さんと三人で夕飯食べたこともあったなぁ、という、まぁそれだけの話。
了
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