もう50年ほど前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。
昨夜ろくに寝てなかったので、風呂の後に昼寝をしたら思いのほかぐっすり寝込んでしまい・・・。
その日の夕方、赤服隊を満載にした帆掛船が数隻、目の前の川を下って行った。
対岸に銃列を作ってたおもちゃの兵隊さん達も全て浚って行ったので、これはいよいよ蝦夷地へ向けて出港なのかな?と思って居たら、川口方面で騒ぎが起きた。
私達は外に出歩くのを止められていたのでこれは宿の女将さんから聞いた話なんだけど、川口の台場に据え付けて有った大砲を無理矢理引っ剥がして弾薬諸共かっさらって行っちゃったんだって。赤服隊が。
「無茶なことするなぁ」
幸ちゃん笑う。
ホントに可笑しそう。
ていうか緊張感が無い。
「時間稼ぎとしては逆効果じゃない?あんまりハデに動くと却って敵は急いでこっちに向かって来るような気がするんだけど?」
私の方が余裕が無くて、なんだかいつもと逆みたい。
「そうかもね。察するに蝦夷地への出港はもう間も無くってことかな」
畳の上にバックパックの中身を並べて、彼女は携行品のチェックをしていた。
見た限り、京都の家を出て来た時に揃えた中身と変わって無い。
ちょっと思案顔に、
「防寒着が必要かな」
とか言ってる。
それは、蝦夷地に行くつもりだということであって・・・。
私は誘ったつもりは無いんだけどね。
まだそんな話はしてない。
・・・と思う。
あの時「諦めない」とは言ったけど。
このまま蝦夷地まで行っちゃおうなんて誘ったつもりは・・・ない。
自分はもちろんあの人をおゆうさんの許に連れ戻すべく追いかけるつもりで居るけど。
でも幸は・・・。
彼女はそんなことをする必要も無いわけで。
あの人を追いかけてきたのは、私の勝手だからね。
沖田さんに焚きつけられた・・・もとい、背中を押された、とはいえ。
それを考えるとさぁ・・・。
一緒に行こう、とも、来なくていいよ、とも、・・・言えてないわけで。
なのに彼女が蝦夷地行きを当たり前のように考えてるのはやっぱり・・・私のせいなんだろうな(^^;。
奥州に入ってからここ石巻に辿りつくまでの・・・冒険譚(笑)を、ざっとでも話しちゃったのがいけなかったかも(^^;
案の定!と思わせちゃった。
案の定心許ない!って・・・。
江戸から独りで出て来る時も、ほんっとに心配してたからなぁ幸ってば。
女の一人旅なんてもっての外!って。
今度もきっとそう思ってるのかも。
それはそれでとても有難いことではあるけど・・・。
行灯の灯りの届かぬ隅に、風呂敷に包まれたままの行李がひとつ除けて有った。
あれは沖田さんの形見の・・・。
「防寒着ならあるじゃん」
冷やかし半分、何の気も無しに言ってしまって、それからなんだか妙に腑に落ちた気がした。
そっか。
沖田さんも・・・行きたかった?
私の指差していた方へ幸の視線が動いて、止まる。
ほんの僅か、形のよい唇がキュッと尖る。
やっぱり・・・そう思うよね。
沖田さんが今ここに居たなら、絶対あの人と一緒に行くに決まってるって、思うよね。
物思う風情の幸は声をかけるのも憚るぐらいに近寄りがたいオーラを醸すんだけど。
「筒袖だもの、着物の下に重ね着すればいいんじゃん?ズボンは袴の下にさ」
物思う隙を与えなきゃOKだろ!
「・・・」
まぁ・・・少なくとも憂い顔を顰め面ぐらいには出来るよ、うん(^^;
「有るだけ良いじゃん。私なんか何も無いんだよ?いつ舟に乗れるか判らないけどさー、その前に綿入れぐらい用意しとかなきゃマズイよね?昨夜だって渡し舟の上寒くて死にそうだったわ」
とか言ってたら・・・。
戦の予感に人の気配のしなくなった町が暗闇の中に沈んだ頃。
古手屋から着物が届いた。
私宛てにだ。
新選組の人に頼まれた、というオジサンから渡された風呂敷包みを開けてみると、どこでどうやって手に入れたのか、銀の簪も一緒に届けられて。
幸は冷やかし半分、ちょっとはしゃぎ気味。
「凄いじゃん!アンタに逢ったの一昨日なんでしょ?古手とはいえ、こんな短時間に縫い直して届けさせるなんてさすがー」
古手とはいえ、ね。
そう、古手とはいえ、それは紬。絹物だった。
逆に言えば、紬とはいえ古手なだけに柔らかく着古されて、真綿が入って軽くて暖かい。
黒字に金茶~鳶色~こげ茶のグラデーションで大きめの翁格子。
後で着てみた時、
「似合うよ。誂えたみたい」
って、満足げに幸が言った。
丈の足らないのは帯下に別布を継ぎ足して。
裄の足らないのは、袖や身頃に同系色の無地の紬地を上手く切り嵌めにして。
色目があの人の好みとちょっと違う気がするのは、単に選択肢が無かったか、あるいは自分の目で選んだのではなく、丸投げで頼んだからか。
忙しそうだったからそれは仕方がない。
それでも、黒の掛け襟なんてさせないところが、あの人らしいと言えばらしかった。
貧乏くさいのは嫌いなのだ。
・・・って、黒繻子の掛け襟が貧乏くさいかどうかはその人の受け取りようだけど(着る人が着れば「粋」にもなる。私には無理)。
そういう人だった・・・っけ?と改めて思い直す。
まっさらな木綿の着物より絹の古手を選ぶ人?
・・・。
自分は最先端のウールの3ピース着てたけどなー。
まあ、だから、つまり・・・そういう人なんだわ(^^;
京に居た頃には私にだって仕立て下ろしばかり着せてたわけだし(ていうか私のサイズじゃ新たに仕立てないとどうしようもなかった)。
時間が無いところですぐにでも着れるように融通するには古手を縫い直す方が早かったんだろう。
それにしても、物持ちの良い人ではあったから。
身に着ける物にはこだわりが有ったし。
何にしろ持ち物の始末が良かった。
私はいつも叱られてた。
・・・って。
過去形にしてどうする>自分(--;
添えられていた簪は、これも新品ではなさそうで、銀細工で二本脚の髷挿し用。
頭は耳かき状で平打ではなく、親指の頭ほどの小さめの飾りが付いてる。
植物の葉に赤珊瑚の丸く小さな赤い実。
何だろう?千両?
「千両・・・って。お正月用にってことなのかしら?」
「違うでしょ。南天じゃない?」
宿替えした私達をわざわざ探して届けてくれた使いの人に、一服お茶を淹れてあげてから幸が反論。
「南天?千両と南天の違いって何?見て判るの?」
簪の意匠は赤い実と葉が3枚ずつで、私には見分けがつかないけど。
葉の形が違うのかしらん?と思って聞き返した。
使いのオジサンはお茶を飲みながらクスクス笑ってるけどウンとも何とも言わない。
幸は首をすくめて、
「私だって良く判らないけどさ。こんな場面で副長がアンタに置いて行くんだもの。千両よりは南天の方がふさわしい気がする」
て、どういう意味よ?
「南天は『難を転ずる』として魔よけの意味がある。アンタの息災を願って、ってことじゃないの?」
え。
そうなのか?
ていうか息災を願う・・・て。
なんだそれ。
その何か「勝手に話を終わらせられる感」が凄く嫌なんだけど(--メ
なので、
「無事に追いかけて行けるように?」
と、逆手に取ってみる。
ぶ!っと幸は口にしたお茶を吹きそうになりながら、
「副長的にはそういう意味じゃ無いとは思うけどね。江戸行きの船に乗せようとしてたわけだし。でもま、ものは取りようだからそれで良いんじゃない?」
友達甲斐に否定はしない。
だよねーv
「これって、綿入れ着て南天の簪挿して追いかけて来いってことで良いんでしょ?蝦夷地仕様ってことだよね?」
「あはは。そうだね。アンタが素直に受け取るワケ無いもんねー。あーあ、副長ってばカワイソー」
ていうか、向こうも何か読み違えてる、と思った。
素直に受け取る私じゃないことは、あの人だって判ってるはず。
なのに。
以前なら判り切っていたことも、今は判らなくなっている・・・?
でも、それは私も同じかも、と思った。
この、なんだかよく判らない不安な感じ。
こんな気持ちを抱えたまま、諦めて帰れるわけが無い。
ていうか、別れのつもりで贈り物とか頭おかしくなったんじゃんアイツぅ~!って感じ。
やっぱこのままじゃ帰れない。
額兵隊による川口砲台襲撃&略奪事件vが効いたのか、翌日は朝から不穏な空気で、すぐにでも新政府軍(伊達藩兵?)が責めて来るような噂もあり、昼前には荷物をまとめて宿のすぐ前に繋めてあった千石船へ乗せられた。
米俵でいっぱいの船倉へ押し込められ、何が有っても騒ぐな出て来るなと言われて・・・結局そのまま丸3日!過ごすことになったんだ!
その間、船は寸でのところで敵方(新政府方)の取り調べの手を逃れて川を下り、徳川脱走艦隊の待つ折浜まで行ったのよ!
行ったのに!
小さな入り江に大小の洋船がひしめいてるのも、高台に張り付くように建つ家々も、僅かな陸地にダンブクロ姿の兵隊が溢れているのも見たのに!
洋船に荷を積み替えただけで船は陸には着かず、私等も下ろしてくれなかったのよ~っ!
マジで!?
うそ!?
なんで?
そのうちに船はまた動き出し、ナント!・・・石巻に舞い戻った(泣)。
船が岸に着いても、私等は置き去られたままだった。
まあ、下ろしてもらってもそこは既に敵の占拠する町になって居たわけで。
食べ物は船の賄いの少年が握り飯を握って持って来てくれてた。3日間。
寝床は暖房も無い寒くて暗い船倉の中。
最初の晩は米俵の隙間に入り込んで寝たけど。
荷が無くなってからは横になれたが、床板が傾いてるし常に揺れているし寝れたもんじゃない。
二人とも乗り物酔いしない性質だったのがせめてもの救い。
「騙されたー!」
とは思ったけど、誰にどうとは判らなかった。
最初の宿を出て以来、細谷さんとは会ってない。
だから船宿の女将に騙されたのか船の船頭が悪者なのか、それとも単なる連絡ミスからのアクシデントなのか見当がつかない。
誰に苦情を言ったらいいのか。
「ていうかさ、江戸行きの船に乗せてやるって言ってた副長の使いが来ないのはおかしくない?」
幸に指摘されて初めて気付いたり。
「いや、だってこの綿入れを・・・」
「届けたのは古手屋の人だったでしょ?副長の部下とかじゃなかったし。あの人はただ普通に届けものをしただけだと思う。私等が宿替えしたのを探すのは簡単だったろうしね。前の宿からは隠れて出て来たわけじゃなし」
うーん。
船の中で飼われていた三毛猫を行火代わりに抱きしめてたらちょっとフクチョーのことを思い出して和んだ。
アイツはこんな大人しく抱かれてる猫じゃなかったけど。
その猫の顎を掻き撫で、幸が続ける。
「怪しいな。蝦夷地行きと江戸行きと、ホントならどっちからも使いが来て、ひと悶着あっても可笑しくないはずなのに」
空になった船倉ではひそひそ声も良く響く。
息の白いのも見えないくらい真っ暗な3日目の晩。
「副長、わざわざアンタに綿入れ用意するぐらいの人だよ?すぐにでも江戸に送り帰したいはずなのに船の手配の約束を忘れて、つまりアンタのこと放って行っちゃうなんて。有り得ない」
断言する根拠がちょっと薄いような気が・・・私にはするんだけど(^^;
「でも、まるっきり騙されて何処かに売られるってことでも無さそうじゃん?食料は貰えてるしガッツリ身動きできないようにされてるわけじゃなし」
手足を縛られているわけではなかった。
外に出られないようにされているだけだ。
騒ぐとまずいのは・・・こんな状態じゃ言われなくとも判る。
おそらく岸に上がれば敵方の兵がわんさか居るってことぐらいは。
「シッ・・」
と、暗闇の中で口元に幸の指が触れた。
耳を澄ます。
川の流れに揺られて、船はひっきりなしにギュウギュウと軋む。
岸の方からは大挙して居るであろう敵方の人声が風に流れて来る。
チャプ・・・っと、岸とは反対側の舷側に小さな波音がし、幸が身構えるのと、腕の中で猫が低く唸り出すのとは同時。
何者かがするすると舷側を上り、船倉の天井板(=甲板だ)を一枚外した。
月明かりが四角く差し込む。
「おう!」
声に驚いて猫が腕から飛び上がった。
「おい、居るのか?俺だ」
この声は・・・。
幸はすぐ警戒を解き、その代わり私の中で何かがブチッと・・・!
「何が「おう!」よ!何してくれちゃってんのよ!なんでアタシ等がこんな目に遭うのよ~っ!」
勿論音量を抑えてはいたものの、この3日間のうっ憤を全部ぶちまけそうになってしまう。
「すまん。悪ィ。手違いだ。とにかくここから下りてくれ。このままだと・・・」
続く言葉を飲み込んだので、なんとなく事情は判った、と幸が言ってた。
手違いは船の行き先だった。
私等が乗り込んで居たのは江戸に向かうはずの船だったらしい。
折浜に向かったのは江戸行きの前の小仕事だったらしい(えー)。
ていうか。
つまりそのまま江戸に行くまで乗せとくつもりだったらしい・・・!
誰が!?・・・って、細谷さんがっ。
私等をっ。
騙して江戸に帰すつもりだった!
・・・ってことらしいよ。うん。
バカヤロー!
って言ったわ(--メ
蝦夷地行きの船を捜してやるって言ったくせにぃー!!
私が石巻入りした日=あの人に逢ったその日のうちに、もしくはその翌日には、直接本人からではなく(この何日かは本人とは接触してない)島田さんに頼まれたらしいのだ。
私等を江戸に帰して欲しいってさ!
お金まで受け取ってたって。三十両も!
金に目が眩んだかー!
って言ったら、必死に弁解してたっけ。
戦に出る男が身内の心配するのは当たり前だ、とか。
後顧の憂い無きよう計らうのが武士の情けだ、とか。
頼まれたからにはちゃんと送り届けるつもりだった、とか。
金は江戸に着いたらちゃんと手渡すつもりだった、とか(でも経費&手数料は抜くつもりだったみたい)。
ああー!
この人を丸々信用したアタシが馬鹿だったー!
思えば以前にも似たようなことをされた覚えが・・・。
「っていうか、ホントに2度目なら騙される方もどうなの?」
って幸にも言われたけど。
まあそうなんだけど・・・。
でもさー、悪気じゃなかったって判ると警戒心が無くなるんだよねー。
前の時も、土方さんを探しに戦場を追っかけて歩くのは危ないからって・・・会津領にはなかなか入れてもらえなかったし、すぐに仙台領まで引き揚げさせられた。
それが、あの人に会うのに江戸を出てから半年近くもかかった主な理由なんだけどね。
つまりは邪魔された、ってことなのかもしれないけど。
でもその間ずっと世話にもなってて・・・。
面倒かけたし助かった。
親分肌で面倒見が良くて。
彼と一緒に居たからこそ、こんな私が危ない目にも遭わず路頭に迷うことなくここまで来れたってこともあるんで(それにしても時間はかかったが)。
確かに、女に目が無いし金に鷹揚で調子イイとこあるし儲け話は好きだし抜け目無い所もあるので油断は出来ない相手ではあるんだけど。
憎めないんだよなー。
あっけらかんとしててさ、気が置けなくてお茶目で(アンタの好きなタイプだもんね、とは幸の言)。
それにやっぱ、スタンスは変わって無いので。
江戸に帰って、土方さんを安心させろって言うの。
それが一番良いって。
危ないところに追いかけて来るよりその方が男は安心するからって。
そういう理屈。
前から彼はそういう理屈。
ていうかやっぱ結局みんな、そういう理屈なのね。
なので、聞きたかったことの答えはもう出てた。
「斎藤さん・・・山口次郎さんが戦死したことを教えてくれなかったのも、そういう理屈?遠くに居て相手の消息は知らないで居た方が良いってこと?それが「安心」って意味?何も知らないで居るのが幸せってこと?」
土方さんが知ってたんだもの、細谷さんはもっと早くに斎藤さんの戦死を知ってておかしくない。
いや、知ってたはずだ。
彼はもともと伊達藩の探索方だもの。
もうひと月以上も前のことでもあるし、知ってて当然。
それを私にはひとっ言も、部下からも漏らさせなかった。
だから私は土方さんから聞くまで斎藤さんの死を知らなかった。
細谷さんと斎藤さんは一時、白河口で一緒に戦ったことが有って、その間私も近くに居て。
ていうか、戦場に在った斎藤さんに引き合わせてくれたのが細谷さんだった。
だから、斎藤さんと私の関係を細谷さんは良く知ってるはずだった。
なのに、黙ってた。
どうして黙って居たのか。
黙って居る間、どんな気持ちで居たのか。
どんな気持ちで私を見てたのか。
それを聞いてみたかった。
問い質したかった、って言うのが近いか。
そしたら。
今日は烏組の隊長らしく全身黒&紺ずくめの髭面のコワモテが、
「己の口で言っちまうと、本当になっちまうような気がすんだろ?」
ってぼそっと。
ギョロ目の濃い顔がシュンって小さくしぼんで見えた。
そうだった。
超リアリストなくせに、時々子供みたいな人なんだ。
「ってことは、言わなきゃもしかして・・・?」
望みを繋ごうとする私に、
「見たわけじゃねぇからな。誰も見たわけじゃねぇ」
否定しながら、逆に自分に言い聞かせている風でもあって。
「そこに居た新選組はみんな死んだと。生きて戻った奴は居ねぇと聞いた。だがみな伝聞だ。実際に見た人間からの報告は無ぇ」
「じゃじゃあ、やっぱりもしかしたら・・・!」
生きているかも。
と言って欲しかったけど、その可能性が限り無く薄いことには変わりなく、安易に口にするのはためらわれたとみえ、
「だといいな」
強がった笑顔の口元がちょっと強張ってた。
気休めに過ぎないとは、自分でも良く判って居るのだった。
でもその正直なところが好もしくて。
「そのつもりで居るってことよね?」
今度はこちらが強がる番だろう。
睨み顔を作って念を押した。
「お、おう」
腰が引けてる(笑)。
「私等が居ない間、探しておいてくれるんでしょ?」
と決めつける。
「お、おう」
こわごわ返事をしながら顔は厳めしく顰めるのが、可笑しくて笑っちゃった。
今度は本気で蝦夷地行きに手を貸してくれることになったし(「朔風」参照)、許してあげることにするか。
その日の夕方、赤服隊を満載にした帆掛船が数隻、目の前の川を下って行った。
対岸に銃列を作ってたおもちゃの兵隊さん達も全て浚って行ったので、これはいよいよ蝦夷地へ向けて出港なのかな?と思って居たら、川口方面で騒ぎが起きた。
私達は外に出歩くのを止められていたのでこれは宿の女将さんから聞いた話なんだけど、川口の台場に据え付けて有った大砲を無理矢理引っ剥がして弾薬諸共かっさらって行っちゃったんだって。赤服隊が。
「無茶なことするなぁ」
幸ちゃん笑う。
ホントに可笑しそう。
ていうか緊張感が無い。
「時間稼ぎとしては逆効果じゃない?あんまりハデに動くと却って敵は急いでこっちに向かって来るような気がするんだけど?」
私の方が余裕が無くて、なんだかいつもと逆みたい。
「そうかもね。察するに蝦夷地への出港はもう間も無くってことかな」
畳の上にバックパックの中身を並べて、彼女は携行品のチェックをしていた。
見た限り、京都の家を出て来た時に揃えた中身と変わって無い。
ちょっと思案顔に、
「防寒着が必要かな」
とか言ってる。
それは、蝦夷地に行くつもりだということであって・・・。
私は誘ったつもりは無いんだけどね。
まだそんな話はしてない。
・・・と思う。
あの時「諦めない」とは言ったけど。
このまま蝦夷地まで行っちゃおうなんて誘ったつもりは・・・ない。
自分はもちろんあの人をおゆうさんの許に連れ戻すべく追いかけるつもりで居るけど。
でも幸は・・・。
彼女はそんなことをする必要も無いわけで。
あの人を追いかけてきたのは、私の勝手だからね。
沖田さんに焚きつけられた・・・もとい、背中を押された、とはいえ。
それを考えるとさぁ・・・。
一緒に行こう、とも、来なくていいよ、とも、・・・言えてないわけで。
なのに彼女が蝦夷地行きを当たり前のように考えてるのはやっぱり・・・私のせいなんだろうな(^^;。
奥州に入ってからここ石巻に辿りつくまでの・・・冒険譚(笑)を、ざっとでも話しちゃったのがいけなかったかも(^^;
案の定!と思わせちゃった。
案の定心許ない!って・・・。
江戸から独りで出て来る時も、ほんっとに心配してたからなぁ幸ってば。
女の一人旅なんてもっての外!って。
今度もきっとそう思ってるのかも。
それはそれでとても有難いことではあるけど・・・。
行灯の灯りの届かぬ隅に、風呂敷に包まれたままの行李がひとつ除けて有った。
あれは沖田さんの形見の・・・。
「防寒着ならあるじゃん」
冷やかし半分、何の気も無しに言ってしまって、それからなんだか妙に腑に落ちた気がした。
そっか。
沖田さんも・・・行きたかった?
私の指差していた方へ幸の視線が動いて、止まる。
ほんの僅か、形のよい唇がキュッと尖る。
やっぱり・・・そう思うよね。
沖田さんが今ここに居たなら、絶対あの人と一緒に行くに決まってるって、思うよね。
物思う風情の幸は声をかけるのも憚るぐらいに近寄りがたいオーラを醸すんだけど。
「筒袖だもの、着物の下に重ね着すればいいんじゃん?ズボンは袴の下にさ」
物思う隙を与えなきゃOKだろ!
「・・・」
まぁ・・・少なくとも憂い顔を顰め面ぐらいには出来るよ、うん(^^;
「有るだけ良いじゃん。私なんか何も無いんだよ?いつ舟に乗れるか判らないけどさー、その前に綿入れぐらい用意しとかなきゃマズイよね?昨夜だって渡し舟の上寒くて死にそうだったわ」
とか言ってたら・・・。
戦の予感に人の気配のしなくなった町が暗闇の中に沈んだ頃。
古手屋から着物が届いた。
私宛てにだ。
新選組の人に頼まれた、というオジサンから渡された風呂敷包みを開けてみると、どこでどうやって手に入れたのか、銀の簪も一緒に届けられて。
幸は冷やかし半分、ちょっとはしゃぎ気味。
「凄いじゃん!アンタに逢ったの一昨日なんでしょ?古手とはいえ、こんな短時間に縫い直して届けさせるなんてさすがー」
古手とはいえ、ね。
そう、古手とはいえ、それは紬。絹物だった。
逆に言えば、紬とはいえ古手なだけに柔らかく着古されて、真綿が入って軽くて暖かい。
黒字に金茶~鳶色~こげ茶のグラデーションで大きめの翁格子。
後で着てみた時、
「似合うよ。誂えたみたい」
って、満足げに幸が言った。
丈の足らないのは帯下に別布を継ぎ足して。
裄の足らないのは、袖や身頃に同系色の無地の紬地を上手く切り嵌めにして。
色目があの人の好みとちょっと違う気がするのは、単に選択肢が無かったか、あるいは自分の目で選んだのではなく、丸投げで頼んだからか。
忙しそうだったからそれは仕方がない。
それでも、黒の掛け襟なんてさせないところが、あの人らしいと言えばらしかった。
貧乏くさいのは嫌いなのだ。
・・・って、黒繻子の掛け襟が貧乏くさいかどうかはその人の受け取りようだけど(着る人が着れば「粋」にもなる。私には無理)。
そういう人だった・・・っけ?と改めて思い直す。
まっさらな木綿の着物より絹の古手を選ぶ人?
・・・。
自分は最先端のウールの3ピース着てたけどなー。
まあ、だから、つまり・・・そういう人なんだわ(^^;
京に居た頃には私にだって仕立て下ろしばかり着せてたわけだし(ていうか私のサイズじゃ新たに仕立てないとどうしようもなかった)。
時間が無いところですぐにでも着れるように融通するには古手を縫い直す方が早かったんだろう。
それにしても、物持ちの良い人ではあったから。
身に着ける物にはこだわりが有ったし。
何にしろ持ち物の始末が良かった。
私はいつも叱られてた。
・・・って。
過去形にしてどうする>自分(--;
添えられていた簪は、これも新品ではなさそうで、銀細工で二本脚の髷挿し用。
頭は耳かき状で平打ではなく、親指の頭ほどの小さめの飾りが付いてる。
植物の葉に赤珊瑚の丸く小さな赤い実。
何だろう?千両?
「千両・・・って。お正月用にってことなのかしら?」
「違うでしょ。南天じゃない?」
宿替えした私達をわざわざ探して届けてくれた使いの人に、一服お茶を淹れてあげてから幸が反論。
「南天?千両と南天の違いって何?見て判るの?」
簪の意匠は赤い実と葉が3枚ずつで、私には見分けがつかないけど。
葉の形が違うのかしらん?と思って聞き返した。
使いのオジサンはお茶を飲みながらクスクス笑ってるけどウンとも何とも言わない。
幸は首をすくめて、
「私だって良く判らないけどさ。こんな場面で副長がアンタに置いて行くんだもの。千両よりは南天の方がふさわしい気がする」
て、どういう意味よ?
「南天は『難を転ずる』として魔よけの意味がある。アンタの息災を願って、ってことじゃないの?」
え。
そうなのか?
ていうか息災を願う・・・て。
なんだそれ。
その何か「勝手に話を終わらせられる感」が凄く嫌なんだけど(--メ
なので、
「無事に追いかけて行けるように?」
と、逆手に取ってみる。
ぶ!っと幸は口にしたお茶を吹きそうになりながら、
「副長的にはそういう意味じゃ無いとは思うけどね。江戸行きの船に乗せようとしてたわけだし。でもま、ものは取りようだからそれで良いんじゃない?」
友達甲斐に否定はしない。
だよねーv
「これって、綿入れ着て南天の簪挿して追いかけて来いってことで良いんでしょ?蝦夷地仕様ってことだよね?」
「あはは。そうだね。アンタが素直に受け取るワケ無いもんねー。あーあ、副長ってばカワイソー」
ていうか、向こうも何か読み違えてる、と思った。
素直に受け取る私じゃないことは、あの人だって判ってるはず。
なのに。
以前なら判り切っていたことも、今は判らなくなっている・・・?
でも、それは私も同じかも、と思った。
この、なんだかよく判らない不安な感じ。
こんな気持ちを抱えたまま、諦めて帰れるわけが無い。
ていうか、別れのつもりで贈り物とか頭おかしくなったんじゃんアイツぅ~!って感じ。
やっぱこのままじゃ帰れない。
額兵隊による川口砲台襲撃&略奪事件vが効いたのか、翌日は朝から不穏な空気で、すぐにでも新政府軍(伊達藩兵?)が責めて来るような噂もあり、昼前には荷物をまとめて宿のすぐ前に繋めてあった千石船へ乗せられた。
米俵でいっぱいの船倉へ押し込められ、何が有っても騒ぐな出て来るなと言われて・・・結局そのまま丸3日!過ごすことになったんだ!
その間、船は寸でのところで敵方(新政府方)の取り調べの手を逃れて川を下り、徳川脱走艦隊の待つ折浜まで行ったのよ!
行ったのに!
小さな入り江に大小の洋船がひしめいてるのも、高台に張り付くように建つ家々も、僅かな陸地にダンブクロ姿の兵隊が溢れているのも見たのに!
洋船に荷を積み替えただけで船は陸には着かず、私等も下ろしてくれなかったのよ~っ!
マジで!?
うそ!?
なんで?
そのうちに船はまた動き出し、ナント!・・・石巻に舞い戻った(泣)。
船が岸に着いても、私等は置き去られたままだった。
まあ、下ろしてもらってもそこは既に敵の占拠する町になって居たわけで。
食べ物は船の賄いの少年が握り飯を握って持って来てくれてた。3日間。
寝床は暖房も無い寒くて暗い船倉の中。
最初の晩は米俵の隙間に入り込んで寝たけど。
荷が無くなってからは横になれたが、床板が傾いてるし常に揺れているし寝れたもんじゃない。
二人とも乗り物酔いしない性質だったのがせめてもの救い。
「騙されたー!」
とは思ったけど、誰にどうとは判らなかった。
最初の宿を出て以来、細谷さんとは会ってない。
だから船宿の女将に騙されたのか船の船頭が悪者なのか、それとも単なる連絡ミスからのアクシデントなのか見当がつかない。
誰に苦情を言ったらいいのか。
「ていうかさ、江戸行きの船に乗せてやるって言ってた副長の使いが来ないのはおかしくない?」
幸に指摘されて初めて気付いたり。
「いや、だってこの綿入れを・・・」
「届けたのは古手屋の人だったでしょ?副長の部下とかじゃなかったし。あの人はただ普通に届けものをしただけだと思う。私等が宿替えしたのを探すのは簡単だったろうしね。前の宿からは隠れて出て来たわけじゃなし」
うーん。
船の中で飼われていた三毛猫を行火代わりに抱きしめてたらちょっとフクチョーのことを思い出して和んだ。
アイツはこんな大人しく抱かれてる猫じゃなかったけど。
その猫の顎を掻き撫で、幸が続ける。
「怪しいな。蝦夷地行きと江戸行きと、ホントならどっちからも使いが来て、ひと悶着あっても可笑しくないはずなのに」
空になった船倉ではひそひそ声も良く響く。
息の白いのも見えないくらい真っ暗な3日目の晩。
「副長、わざわざアンタに綿入れ用意するぐらいの人だよ?すぐにでも江戸に送り帰したいはずなのに船の手配の約束を忘れて、つまりアンタのこと放って行っちゃうなんて。有り得ない」
断言する根拠がちょっと薄いような気が・・・私にはするんだけど(^^;
「でも、まるっきり騙されて何処かに売られるってことでも無さそうじゃん?食料は貰えてるしガッツリ身動きできないようにされてるわけじゃなし」
手足を縛られているわけではなかった。
外に出られないようにされているだけだ。
騒ぐとまずいのは・・・こんな状態じゃ言われなくとも判る。
おそらく岸に上がれば敵方の兵がわんさか居るってことぐらいは。
「シッ・・」
と、暗闇の中で口元に幸の指が触れた。
耳を澄ます。
川の流れに揺られて、船はひっきりなしにギュウギュウと軋む。
岸の方からは大挙して居るであろう敵方の人声が風に流れて来る。
チャプ・・・っと、岸とは反対側の舷側に小さな波音がし、幸が身構えるのと、腕の中で猫が低く唸り出すのとは同時。
何者かがするすると舷側を上り、船倉の天井板(=甲板だ)を一枚外した。
月明かりが四角く差し込む。
「おう!」
声に驚いて猫が腕から飛び上がった。
「おい、居るのか?俺だ」
この声は・・・。
幸はすぐ警戒を解き、その代わり私の中で何かがブチッと・・・!
「何が「おう!」よ!何してくれちゃってんのよ!なんでアタシ等がこんな目に遭うのよ~っ!」
勿論音量を抑えてはいたものの、この3日間のうっ憤を全部ぶちまけそうになってしまう。
「すまん。悪ィ。手違いだ。とにかくここから下りてくれ。このままだと・・・」
続く言葉を飲み込んだので、なんとなく事情は判った、と幸が言ってた。
手違いは船の行き先だった。
私等が乗り込んで居たのは江戸に向かうはずの船だったらしい。
折浜に向かったのは江戸行きの前の小仕事だったらしい(えー)。
ていうか。
つまりそのまま江戸に行くまで乗せとくつもりだったらしい・・・!
誰が!?・・・って、細谷さんがっ。
私等をっ。
騙して江戸に帰すつもりだった!
・・・ってことらしいよ。うん。
バカヤロー!
って言ったわ(--メ
蝦夷地行きの船を捜してやるって言ったくせにぃー!!
私が石巻入りした日=あの人に逢ったその日のうちに、もしくはその翌日には、直接本人からではなく(この何日かは本人とは接触してない)島田さんに頼まれたらしいのだ。
私等を江戸に帰して欲しいってさ!
お金まで受け取ってたって。三十両も!
金に目が眩んだかー!
って言ったら、必死に弁解してたっけ。
戦に出る男が身内の心配するのは当たり前だ、とか。
後顧の憂い無きよう計らうのが武士の情けだ、とか。
頼まれたからにはちゃんと送り届けるつもりだった、とか。
金は江戸に着いたらちゃんと手渡すつもりだった、とか(でも経費&手数料は抜くつもりだったみたい)。
ああー!
この人を丸々信用したアタシが馬鹿だったー!
思えば以前にも似たようなことをされた覚えが・・・。
「っていうか、ホントに2度目なら騙される方もどうなの?」
って幸にも言われたけど。
まあそうなんだけど・・・。
でもさー、悪気じゃなかったって判ると警戒心が無くなるんだよねー。
前の時も、土方さんを探しに戦場を追っかけて歩くのは危ないからって・・・会津領にはなかなか入れてもらえなかったし、すぐに仙台領まで引き揚げさせられた。
それが、あの人に会うのに江戸を出てから半年近くもかかった主な理由なんだけどね。
つまりは邪魔された、ってことなのかもしれないけど。
でもその間ずっと世話にもなってて・・・。
面倒かけたし助かった。
親分肌で面倒見が良くて。
彼と一緒に居たからこそ、こんな私が危ない目にも遭わず路頭に迷うことなくここまで来れたってこともあるんで(それにしても時間はかかったが)。
確かに、女に目が無いし金に鷹揚で調子イイとこあるし儲け話は好きだし抜け目無い所もあるので油断は出来ない相手ではあるんだけど。
憎めないんだよなー。
あっけらかんとしててさ、気が置けなくてお茶目で(アンタの好きなタイプだもんね、とは幸の言)。
それにやっぱ、スタンスは変わって無いので。
江戸に帰って、土方さんを安心させろって言うの。
それが一番良いって。
危ないところに追いかけて来るよりその方が男は安心するからって。
そういう理屈。
前から彼はそういう理屈。
ていうかやっぱ結局みんな、そういう理屈なのね。
なので、聞きたかったことの答えはもう出てた。
「斎藤さん・・・山口次郎さんが戦死したことを教えてくれなかったのも、そういう理屈?遠くに居て相手の消息は知らないで居た方が良いってこと?それが「安心」って意味?何も知らないで居るのが幸せってこと?」
土方さんが知ってたんだもの、細谷さんはもっと早くに斎藤さんの戦死を知ってておかしくない。
いや、知ってたはずだ。
彼はもともと伊達藩の探索方だもの。
もうひと月以上も前のことでもあるし、知ってて当然。
それを私にはひとっ言も、部下からも漏らさせなかった。
だから私は土方さんから聞くまで斎藤さんの死を知らなかった。
細谷さんと斎藤さんは一時、白河口で一緒に戦ったことが有って、その間私も近くに居て。
ていうか、戦場に在った斎藤さんに引き合わせてくれたのが細谷さんだった。
だから、斎藤さんと私の関係を細谷さんは良く知ってるはずだった。
なのに、黙ってた。
どうして黙って居たのか。
黙って居る間、どんな気持ちで居たのか。
どんな気持ちで私を見てたのか。
それを聞いてみたかった。
問い質したかった、って言うのが近いか。
そしたら。
今日は烏組の隊長らしく全身黒&紺ずくめの髭面のコワモテが、
「己の口で言っちまうと、本当になっちまうような気がすんだろ?」
ってぼそっと。
ギョロ目の濃い顔がシュンって小さくしぼんで見えた。
そうだった。
超リアリストなくせに、時々子供みたいな人なんだ。
「ってことは、言わなきゃもしかして・・・?」
望みを繋ごうとする私に、
「見たわけじゃねぇからな。誰も見たわけじゃねぇ」
否定しながら、逆に自分に言い聞かせている風でもあって。
「そこに居た新選組はみんな死んだと。生きて戻った奴は居ねぇと聞いた。だがみな伝聞だ。実際に見た人間からの報告は無ぇ」
「じゃじゃあ、やっぱりもしかしたら・・・!」
生きているかも。
と言って欲しかったけど、その可能性が限り無く薄いことには変わりなく、安易に口にするのはためらわれたとみえ、
「だといいな」
強がった笑顔の口元がちょっと強張ってた。
気休めに過ぎないとは、自分でも良く判って居るのだった。
でもその正直なところが好もしくて。
「そのつもりで居るってことよね?」
今度はこちらが強がる番だろう。
睨み顔を作って念を押した。
「お、おう」
腰が引けてる(笑)。
「私等が居ない間、探しておいてくれるんでしょ?」
と決めつける。
「お、おう」
こわごわ返事をしながら顔は厳めしく顰めるのが、可笑しくて笑っちゃった。
今度は本気で蝦夷地行きに手を貸してくれることになったし(「朔風」参照)、許してあげることにするか。
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