もう50年ほど前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
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斎藤さんが直線的な眉を微妙に歪め、
「なんて顔してる。アンタ、なんか勘違いしてないか」
既にこちらの心の内を読み空かして、戸口に寄りかかっていた背を伸ばし覗きこんで来る。
逆光に顔が暗く見えるのがなんだか不気味に思えて、余計身構えちゃって、
「へっ?」
声が裏返っちゃった。
なので、
「『お守してくれるなら一緒に遊ぼう』って言ったのはアンタの方だぞ?忘れたのか」
あ・・・。
あああ。
そうだった(脱力)。
斎藤さんの慌てた顔を見るのが楽しくて、困らせようとそう言った。
なのに、
「だっ・・だよねだよね」
今は自分の方が慌ててたり。
あわわと取り繕う姿が可笑しかったのか、斎藤さんがくすっと笑ったのが(すごく優しい笑顔だったんだけどそれだけに)・・・負けた気がして(何)憎らしくて、
「だ、だって・・・」
うろたえる目の端に、庭の物干しにつるされたままの幸の防具が見えたのを幸い、
「しょうがないじゃん!そっちが・・・」
取り込みに行くのを口実にその場を逃がれる。
鴨居に元結が付かぬよう、首を曲げて半間の間口に「く」の字に納まっている(絶対わざとだ)斎藤さんの脇を、こちらも腰を屈めてすり抜けざま、
「誤解されるようなことしたからでしょ!」
言ってやった~v
せめてもの反撃。
何のことを言われたのかはすぐに気付いたのに違いない。
上がりかけた雪の中、竿から洗濯物を外している背中に、
「誤解じゃないが・・な」
「んんんもう!」
腕を組んでしたり顔で何言ってんだよ!
からかわれてるのか本気なのかは判らなくても、頭には来たぞ。
「アンタやっぱり可愛・・」
恥ずかしい言葉を垂れ流しかけた相手に、抱えていた洗濯物のカタマリを投げつける。
反射的に受け取ったものの、雪に半分濡れていた洗濯物のしぶきを浴びて、
「わ」
と、さすがの斎藤さんも声をあげた。
「ふざけたこと言ってないで、さっさと縁側ゾーキンがけする!ホラ濡れてるでしょそこ!」
斎藤さんの足元を指差した。
お天気雨ならぬお天気雪で、吹き込んだそばから融けてしまった雪が縁側のヘリを濡らしてしまってた。
雨戸の溝に水が溜まりかけてる。
「あとその籠手だのなんだの。雪で濡れちゃったとこだけ手拭で拭いて納戸に片づけて」
肩や袖に留った雪を払い縁側に上がっても、斎藤さんは洗濯物を抱えたまま、返事も無くこちらを見てる。
「それが終わったら座敷の履き掃除ね。あ、納戸を先にしないとダメかな?ここ何日かでゴミ溜め同然になってるから。覚悟しといて」
そこまで言ってもまだ固まってる(笑)。
「何かご質問でも?」
冷たく言ったら、
「あ、いや、・・・怒らせてしまったかと・・・」
今度は神妙な顔つき。
まったく。
もう。
からかってるのかと思って凹ませてみれば凹んだまま・・・ってな~(--;
なんか、・・・なんていうのかな。
距離感がイマイチ微妙で測りずらいんだよねこの人。
「そんなことないって。別に怒ってないよー」
そんなシリアスに怒ってた訳じゃなし。
「でも私、幸とは違うんだからね。特別扱いは致しません。ていうか掃除ぐらいは手伝ってもらわないと困るんだよね。それこそ遊ぶ時間が無くなっちゃうし。あ、あとー、お風呂掃除もしといてもらおうかな・・・」
雪はすぐに止んでお天気が良くなったので、納戸の天窓を開けて換気しながら念入りに掃除をする。
風通しが良いので寒くて、まあそれは例によって着膨れしてるので良いんだけれど手が冷たくてね。
「ごめ~ん。座敷の履き掃除は私がやるから」
手拭で無駄に姉さん被りしておきながら、茶の間で火鉢に齧りついて手あぶりばかりしてたわ(こら)。
斎藤さんが一生懸命、納戸の板目拭きして。
幸には見せられないな(^^;
彼は借りた着物を汚すのは忍びないと言って、監察方の変装用の古着の中から木綿の長着と武者袴を探し出して作業着にしてる。
裸足に加えて、襷掛けした袖からにょっきり生えた逞しくもつるっと色白の腕が寒々しくてかなわないんだけどー。
本人は額に汗して黙々と働いてるけど。
黙々と動きながら、たぶんきっと気持ちはどっか行ってるのかも。
今朝旅立った藤堂さんのところとか・・・。
沖田さんとはちゃんと向き合えたかな。
ちゃんと”説教”出来たのかな。
沖田さんはちゃんと納得したのかな。
それで幸の心配事は解消できたのかな。
今頃はもう安心出来ているのかな・・・。
火鉢の上で、鉄瓶の湯が沸いてる。
半分開けた蓋の隙間から白く、湯気がちょっとだけ立ち上ってすぐに消えて行く。
冷えた冬の空気が湿度をすぐに吸ってしまうから。
陽の当たって来た畳の上でフクチョーがギューンと長く伸びをした。
あー・・・。
お昼、何食べよう・・・。
・・・。
はっとして目が開いた。
いつのまにか寝てた(!)。
突っ伏していた火鉢のヘリから顔を上げると斎藤さんがっ!
嬉しそうに目が笑ってんだコレが(--;
「何見てんのよ~~!」
「眠いなら無理せんでちゃんと布団に寝たらどうだ。風邪、ぶり返すぞ」
「ねーむーくーなーいーー」
問題児が居なくなって気が緩んだだけだい!
刀箪笥を納戸に納めたらあとは終わり、と言われて、伸びをしながらあくびも出ちゃう。
「そっちこそ、今夜も徹夜する気なら今のうちに寝ておけばー?」
と言ったつもりがあくびに飲み込まれ、
「アンタ、何言ってるか判らんぞ」
眉をハの字にした斎藤さんの顔が珍しくて、こっちも笑っちゃう。
なのに、
「どうしてアンタをここに選んだんだろうな?あの人は」
へ?
と、不意を突かれてあくびも笑いも引っ込んだ。
またか、と呆れたというのもある。
「またその話?そんなの知らないってば。前にも訊かなかった?それ。山崎さんに聞いて見たら?って、前にも答えなかったっけ?それ」
斎藤さんってば、まだ眉がハの字。
・・・そうね。
そうでしょうとも。
男の人の前で大口開けてあくびしてるような女がなんで?と疑問にも思いましょう(^^;
山崎さんに訊いてる暇も無かったろうしね。
ていうか、
「そんなに知りたいの?」
すると、気が付いたように眉が元に戻った(爆)。
しばし視線が惑って、
「それを聞けばあるいは・・・」
口ごもる。
「?」
首をかしげた私をちらりと見て、
「判るかも知れんと思った。あんたが気に入られている理由を聞けば、あるいは・・・」
何のことを言ってるのか。
火鉢の向こう側に座って、火鉢に残る灰ならしの跡を見るともなく見ている。
「俺もなぜだか判らんから・・・」
「何が?」
私のことを聞いて他の何かの手がかりにしたいとかそういう流れか。
「あの人が、どうして俺を好いてくれるのかが」
・・・あ?(((--;
って一瞬ギャグりそうになったけど、相手の様子がそんな感じじゃない。
つまりは自分が土方さんに気に入られている理由が・・・判らないということらしいのだ。
意外だった。
まあ、あの人が斎藤さんのことを大事にしてるように見えるのは確かなんだけど。
「何か訳があるんだと思ってた」
今回の一件にしても、この人を乱闘現場から離そうという魂胆アリアリだったし(本人は邪魔者として排除されたと思ってるみたいだけど)。
部外者の私には判らない何らかの事情があるんだと思ってた。
「だろう?だが俺自身思い当たらんのだ。大分前から・・・腑には落ちんのだが」
それは伊東派からの情報を流せと頼まれる、もっと前からという意味なのか。
「あの人の人を選ぶ基準というのは何なのだろうな?」
私の場合、ここに使われるようになった訳は天涯孤独の身だったからだ。
まあ便宜上、あえてそういう設定にしたんだけどね(^^;
たまたま拾われた家が新選組の最初の屯所で、住み込みで働いていたのも当座の生活のためであって、代々仕えていた使用人というわけでもなく借金抱えて奉公に出てるわけでもなかったし。
なのでここ(=新選組副長の休息所)で斬り合いに巻き込まれて怪我しようが死んじゃおうが、誰に遠慮も無く責任も負わずに済むってことで、手っ取り早く採用されちゃったわけだ。
半ば強引に。
その後他の誰かをここに充てることも可能だったんだろうけど・・・。
新しくスパイじゃなさそうなのを見つけて連れて来くるのが面倒になったんじゃないかと思うのよね。
おゆうさんのこともあるしさ。
それを言い含めて、新選組内部にまで秘密にしておくように教育するのが面倒だったんでしょ、あのオジサン(=土方さん)は。
なので、自分自身の採用要因について知らぬ存ぜぬを通して居るのは表向きなのだけど。
斎藤さんの場合は・・・。
やっぱ内部事情を知らない者には推測するのも無理なワケでー。
相手の小作りな口元が一文字に引き結ばれるのを見ながら、「不信」って不安から来るものなのかも、と、思ったりした。
「誤解してるみたいだから言っとくけどさぁ、あの人が私に手を出さないのは、なにも私のことが大事ってぇわけじゃなくてー、ただ単に私みたいのが好みじゃないからなんだよ?ホントにそれだけなんだよ?」
今度はそういうツッコミをされているわけで(^^;
「だから斎藤さんはさ、大事なものを譲られそうになったわけじゃないんだから別にあの人に恩義を感じなくて良いと思うんだけどー」
さりげなく少しづつ、話題の方向変換を試み中。
刀箪笥も退けられて広くなった座敷を掃く間、斎藤さんはちょっと(冷酒でv)一服中。
「ふふ。そうかな?」
からかうような含み笑いが返って来て、未だ酔っぱらってる訳でもないだろうに、と私はちょっとうんざり溜息が出た。
なので茶ガラを掃き集める手を止めたりはしない。
「そうかなってなによ?ったく何で判んないかなぁ~。見てりゃ判るじゃん。私の扱いなんかさー・・・」
「見てて判ったんだが」
「はぁ?」
どこ見て?
と、振り返る。
彼は襷がけをほどかぬまま火鉢の前に正座して(笑)茶碗酒を汲んでいるところ。
膝の上にフクチョーがとぐろを巻いてた。
傾けた湯呑みの縁から覗いている一重の目が、そこそこ鋭くこちらを見上げ、
「あんた、あの人が好きだろう?」
ドヤ顔だよ(タメイキ)。
「何言ってんの。寝ぼけてる?私のどこ見てそう思うわけ?」
思わず長柄の座敷箒を畳に突き立てつつ仁王立ち。
相手は余裕の微笑みで、
「泣いてたろ?」
あ?
「あの人に邪険にされて泣いてたろう?自分でも言ってたじゃないか。普段なら受けて立つのになんで泣いたんだろうって。だからさ。邪険にされて涙が出るのはそういうわけだろう?」
うぇっ!
なにそれ?
何のメロドラマだよ?
やめてよ~~っ!
斎藤さんって優しいし良い人だけど、・・・思い込み激し過ぎ(困惑)。
「あのね。勝手に話を作んないで下さい。そんなんじゃありませんから。ていうか、まったり休んでないで仕事して下さいね。まだいくらでも掃除するとこはあるんですから」
「自分は居眠りしてたくせにな」
なっ!
「いいのっ!そんなこと言わないの。私はいいのっ!」
痛いところを突かれて、とっさに言い訳(↑出来てない)。
ぷっと斎藤さんが吹き出した。
「勝手な理屈はどっちだ・・・」
「いいったらいいの!ここは私のウチなんだから私がルール・・・!(やべ。これって英語じゃん)ってえっとあの・・・とにかく!早いとこ掃除終わらせてお昼にするんだから。そこ退いて」
茶の間に茶ガラを撒き始めると、彼はそれまで座っていた座布団を持ち出し、縁側で埃を叩きながら、
「参ったな・・・」
と呟くのが・・・笑っているように聞こえた。
そのまま座敷に移動したと思ったら、
「アンタ、あの人に似てるよな」
ん?
あの人?って・・・?
アイツのことかい!
失礼な!
と箒を動かす手は止めずに、むっとした顔を作ってそちらに向ける。
すると、
「勝手な理屈と判っていながら従おうと思うのは、その人を好いてるからだ」
からかっているのかと思えば真顔だったり。
「そうでなきゃ従わない。だからつまり、・・・そこまでは良いんだ」
何言ってんのコイツ?
「問題はそうでなくなった時、さ」
ああもう・・・。
訳判んない。
面倒くさい。
「好きじゃないなら別に無理して好きにならなくて良いんじゃないの?好きにすればいいんじゃない?」
投げやりです。
だってもう、何のこと言ってるのか考えるのがさ、面倒くさー。
すると彼は一瞬ぽかんと呆けたような顔をして、それから何故か笑い出しちゃって。
「似てる。似てるよアンタ等」
ちょ!
まだ言うか(超困惑)。
もー訳わからん奴は無視!と決めて、掃除に専念する。
昼前には風呂掃除を終えて、昼飯に握り飯(味噌と醤油の焼きおにぎり。中身は梅干しと昆布の佃煮)を五個も!平らげた斎藤さんは(意外と食べる人だよね)、井戸から水を汲んで風呂の準備を始めてた。
冬場に新しく水から風呂を点てるのは時間がかかる。
一年で一番昼の時間の短いこの時期、明るいうちに順番にゆっくり湯を使うには準備が早過ぎることはない。
斎藤さんのことだから、そんなことはちゃんと計算の上でのことだろう。
それにその方が早い時間に寝れるし、睡眠時間も余計に取れることだしね。
なので、先に風呂を使わせて早いとこ寝かせなくちゃと思いながら台所で洗い物をしていた時だった。
「ちょ!斎藤先生!何してるんですか!小夜アンタ斎藤先生に何させてんのぉぉぉ!!」
叫び声。
幸だ。
来たと気付く前に速攻で怒られた(^^;
「ぎゃぁぁ!すみません!私がやりますから!やめてくださいぃぃ」
って既に悲鳴(笑)。
庭を見ると、風呂敷包みを背負い込んだ幸が、両手に手桶を下げた斎藤さんを押し留めているの図。
押し留められている方は多少困惑気味・・・に見える。
なので、
「だって、斎藤さん良く働いてくれるよ?一家に一台欲しいレベルv」
前垂れで濡れ手を拭き拭き出て行ったら、
「こらっ!何言ってんの!」
「別に無理矢理働かせてるわけじゃないもん。掃除手伝ってって頼んだだけだもん。本人だって楽しんでやってるよ。きっと。ねぇ?」
いや、何も感想を聞いた訳じゃないし楽しいとは言ってはいないけど、黙々と清掃活動に勤しんではいたよね?
「このところ体が鈍って仕方なかったからな。良い汗かかせてもらってる」
「ほらね」
「ほらねじゃなーい!」
幸ちゃんの剣幕ったら面白いv
「まあまあ取りあえず落ち付いて。荷物下ろしなさいよ。何背負ってきたの?」
背負って来た、と言うほど大きな荷物ではなかったけど。
縁側に下ろされた風呂敷包みを解いてみると、一抱えほどの大きさの行李が一つ。
「あとこれ。三条大橋まで行った帰りに買って来た。それとこれは沖田さんから」
幸は手に提げた経木包みと、懐から紙包みの豆菓子を出して縁側に置き、
「サンキュ・・・」
を言う間もくれずに、斎藤さんから手桶をひったくるようにして水汲みを始める。
「お荷物を預かって参りました。一昨日、三浦様のところから屯所に届けられたものの斎藤先生の行方を知るものが居なかったので・・・」
風呂場からの水音を挟んで、出てきた幸が続ける。
「留め置かれていたらしいです。副長が持ち出してくれました」
「くれました・・・って?」
言い回しが気になったので訊いてみた。
幸は井戸から釣瓶を繰りつつ、
「屯所で預かった荷物だもの、勝手に持ち出し出来ないでしょ?でも副長が持ち出したんなら誰も文句が言えない。理由なんか問い質せないもの」
「ふーん。そうなんだ」
「そうなんだ・・・って」
判ってないなぁ、とでも言いたげに溜息をつく。
「三浦さんは俺が屯所に戻ったと思ってるのか・・」
独り言のように言いながら、斎藤さんが行李の蓋を開けた。
中身はすべて衣類と見えた。
が、一番上に手紙が置いてあった。
手紙というか切り紙に書かれたメモ的な?簡単なもの。
「なんて?」
江戸時代に何年居ても書き文字は読めないんだよね(^^;
スッと懐に仕舞い込む仕草がなんとなく、横から見られるのを避けているみたいに思えたけど。
まあ、誰しもプライベートな手紙を他人に読まれるのは嫌かもしれないので。
「呑み相手が居なくなって寂しいとさ」
言って、行李を抱え、縁側から家に上がる斎藤さんの横顔は普段と変わらないようには見えた。
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