もう45年以上前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。
・暇つぶしにネタばらしブログもどうぞ→管理人ざんげ室
ご笑覧下されば幸いです。
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それから先はもうそいつの半径2メートル以内には近づかないようにして過ごした。
相手にしたところで私が大人しくなったことに満足した様子で、もうちょっかいを出そうとはしなかった。
そっくり返って何もしないのだろうと思っていた新選組の副長さんは思っていたより腰が軽くて、私が夕食の片づけをしている間に雨戸を立て、座敷に布団まで延べていた。
但し、奥の座敷に二組。
「こらこら、オジサン、なんなのそれは」
アルコールが入って眠くなったのか、敷いた布団に既に横になっているオジサンに教育的指導。
私の言っている意味が判らないらしく、彼は横になったまま、
「寝るぞ」
「ハイハイ、どうぞ御自由に。でも私、あなたと同じ部屋に寝る気は無いのよ、土方センセイ様」
「なんだって?」
まだピンと来ないらしい。
枕元で私はほとんど酔っ払いを諭す気分。
「だからぁ、私は隣の部屋に寝ます。あなたはこちらで御自由におやすみ下さい。そいじゃ・・」
と、布団を一組、ズズっと隣室に引っ張る。
襖を挟んで床を並べた。
当然私は台所に近い八畳の茶の間に寝るつもり。
「待て」
襖を閉めようとした私の目の前に立ちはだかった相手の身のこなしの素早かったこと。
それまで酔っ払いだと思っていたのが実は素面だと知った驚きと、行灯の灯りのみの薄暗闇に“男”の匂いを嗅いだ恐怖感とで動けなくなる。
20センチと離れない所に男の顔。
自分より余程大きな獣の気配。
声も出ない。
「おい・・!」
目の前の男が不審げに覗き込んだ。
私の見開いた目の中に怯えを見て取ったかどうか。
「どうした?何を呆けてやがるのだ」
普段と変わらぬぶっきらぼうな物言いに、ようやく人心地がつく。
「・・・な、なによ。い今更・・今更一緒に・・」
声がひっくり返ってしまっている。
上手い表現もとっさに見当たらない。
「今更妾の勤めを果たせなんて言うんじゃないでしょうね!」
・・・言ってしまってから赤面した。
「なんだと?」
一瞬の間。
それからフフンと鼻で笑って、
「言ったろ?お前ぇみてぇなションベン臭ぇガキを相手にするほど酔狂じゃ無ぇのサ」
彼は自分が今まで横になっていた寝床を指し、
「お前ぇはこっちで寝な。俺ァそっちで寝る」
「でもこっちの方が台所に近いし、朝ごはんの支度するのに・・・」
「奥の部屋だとて縁側を回りゃ済むことだ」
有無を言わせず、場所を交代させられた。
腑に落ちずに寝床の上に座っていると、
「小夜」
初めて名前で呼ばれ、飛び上がりそうになった。
「・・・ハイ」
見ると、襖を閉めかけた手を止めて微笑っている顔がある。
「お前ぇ、期待し過ぎじゃねぇのか?」
それが先程の私の言動を差していることぐらいすぐ判る。
カッと顔が熱くなると同時に思わず手元にあった箱枕を投げつけた。
が、相手が襖を閉めるのが一瞬早く、箱枕の角が襖紙をキズつけて転がった。
くっくっく、と襖の向こうで笑い声が聞こえている。
恥ずかしさと悔しさで汗が吹き出る思いで、布団被って寝ちまおうかと横になりかけた時、納戸の板戸が目に入った。
そこでようやく、彼がなぜ私をこちらの部屋に寝かそうとしたか、理由が判った。
横になり、有明行灯の蓋を被せ直して隣室の気配を窺う。
熱くなっていたものがすうっと冷める思いがした。
「あの・・土方さん?」
返事は無いが聞いている気配はする。
「なんで私をこっちによこしたか、判った。何かあった時、私を納戸に逃がすつもりでしょ?逃がしやすくしたのでしょ?」
彼が寝ている部屋から納戸に入るには、今私が寝ている六畳間を経由しなくてはならない。
そういうことなのだ。
「さぁな。肝心な時にガーガー寝ちまってちゃ仕方無ぇがな」
・・・やっぱり、そういうことなのだ。
嬉しくなって顔が笑ってくる。
「いいからもう寝な」
深呼吸するように、眠そうな声。
「うん。おやすみ」
いろいろ有った割には、その夜の寝つきは良かった。
「オイ、起きろ」
頭の上で声がする。
「うー」
寝返りを打ったら日差しがモロに顔に当たった。
眩しくて布団を引き被る。
「ねむーい・・・」
もう少し眠ろうとして、今の声は何だったんだろうと思い、
「あーーー!!」
飛び起きた。
眩しくて目が開けられない。
どうやら戸障子は全て開け放たれているようだ。
「うーー」
参った。
そういえばひとりじゃなかったんだっけ。
ああ、ねむーい。
私は朝早いのは苦手なんだからさー。
「おはようございまぁ・・ふ・・」
語尾があくびになる。
敷布団の上に正座して、抱きしめた掛け布団の暖かさが恋しい。
目をつぶったままあくびを連発し、なんとか目を開けようとしてしかめ面になる。
「・・・早いんですね」
「ナニ言ってやがるのだ。もう五つだぜ?」
そう言いますけどねぇ、明け六つの鐘が鳴るのははっきり言って日の出前、空がピンク色になるかならないか、時間で言えば午前4時頃。
それから一刻(=2時間)と言ったってまだ6時じゃないのぉ。
やめてよねー、そういう大時代な生活。
と、ぼやいて判る相手でもないか(諦)。
「すいません」
ぼーっとしているので、寝床から立ち上がったもののさしあたって何をすべきか考えつかない。
台所に行きかけて、はたと思い当たる。
「あー、ごはんの支度、これからだ」
これから米を研ぐのでは炊き上がるまでに一時間はかかる。
「めしは要らん」
声はさっきから庭の方から聞こえている。
初めてそちらへ顔を向ける。
「とんでもねぇ面だな」
・・・いきなり言われちゃったい。
寝起きなんて誰だってとんでもねーよ。
良く見ると彼は既に紋付羽織袴(つまりスーツだな・笑)を着込んでいて帯刀している。
(てことは私の寝ていた部屋に入って来て着替えたという事なんだけど、この時は寝ぼけていて気付かず)
「あれ?もうお出かけですか」
くしゃくしゃになったお下げを解きながら、縁側から庭に降り立つ。
「顔ぐれぇ洗ってから送り出したが良かねぇか?」
あ、そーか。
と思って井戸端に行こうとすると、舌打ちして、
「まぁいい、もう行く。不自由が有れば山崎に言え。俺ぁもうひと月がとこァ来られ無ぇがアイツは時々顔を見せるだろうからな」
不自由があれば、なんて、私に無いのは自由なのに。
判ってるんだろかこのオジサン。
まぁなんだか昨日来た時より機嫌が良さそうだし、鼻持ちならない所も(慣れたのかもしれないが)さほど気にならなくなったので意地悪は言わずにおこう。
「今のとこ何もありませんけど、もし屯所に幸が居たら遊びに来てって言って下さい。退屈で死にそうです。それから・・」
お下げを解いたら見事にソバージュヘアの出来上がり。
不思議そうに見ている彼の目は、このやろうと思うほど下睫が長かった(衝撃)。
甘いマスクってこういうのを言うんだろうな。
「それから、嫌いな私のこと気にかけて下さってありがと。あなたも大変ね」
フンと彼は鼻を鳴らし、
「妙なガキだぜ」
くるりと背を向け、木戸を出る。
「あんただって結構食えないオッサンじゃん。いってらっしゃい。私、舌打ちする人大嫌い」
木戸から首だけ出して送り出す。
憎まれ口を利きながら笑ってしまう。
「大きにお世話さ」
こちらを見ずに答えた。
普段着にしているらしい黒い木綿の羽織の肩が初秋の日差しにテカッている。
足早に遠ざかる主人の、さほどノッポにも見えないのは肩幅の広いせいだなと思った。
身長と身幅とのバランスが取れているからだ。
羽織の裾を翻して、大通りへ見えなくなった。
「さあて、と」
と私は今日一日をどう過ごそうか考え始めた。
天気の良い、気分の良い朝だった。
まず手始めに、
「もうひと寝入りしよっかな」
名案にひとり悦に入って、まだ温かい布団にもぐりこんだ。
相手にしたところで私が大人しくなったことに満足した様子で、もうちょっかいを出そうとはしなかった。
そっくり返って何もしないのだろうと思っていた新選組の副長さんは思っていたより腰が軽くて、私が夕食の片づけをしている間に雨戸を立て、座敷に布団まで延べていた。
但し、奥の座敷に二組。
「こらこら、オジサン、なんなのそれは」
アルコールが入って眠くなったのか、敷いた布団に既に横になっているオジサンに教育的指導。
私の言っている意味が判らないらしく、彼は横になったまま、
「寝るぞ」
「ハイハイ、どうぞ御自由に。でも私、あなたと同じ部屋に寝る気は無いのよ、土方センセイ様」
「なんだって?」
まだピンと来ないらしい。
枕元で私はほとんど酔っ払いを諭す気分。
「だからぁ、私は隣の部屋に寝ます。あなたはこちらで御自由におやすみ下さい。そいじゃ・・」
と、布団を一組、ズズっと隣室に引っ張る。
襖を挟んで床を並べた。
当然私は台所に近い八畳の茶の間に寝るつもり。
「待て」
襖を閉めようとした私の目の前に立ちはだかった相手の身のこなしの素早かったこと。
それまで酔っ払いだと思っていたのが実は素面だと知った驚きと、行灯の灯りのみの薄暗闇に“男”の匂いを嗅いだ恐怖感とで動けなくなる。
20センチと離れない所に男の顔。
自分より余程大きな獣の気配。
声も出ない。
「おい・・!」
目の前の男が不審げに覗き込んだ。
私の見開いた目の中に怯えを見て取ったかどうか。
「どうした?何を呆けてやがるのだ」
普段と変わらぬぶっきらぼうな物言いに、ようやく人心地がつく。
「・・・な、なによ。い今更・・今更一緒に・・」
声がひっくり返ってしまっている。
上手い表現もとっさに見当たらない。
「今更妾の勤めを果たせなんて言うんじゃないでしょうね!」
・・・言ってしまってから赤面した。
「なんだと?」
一瞬の間。
それからフフンと鼻で笑って、
「言ったろ?お前ぇみてぇなションベン臭ぇガキを相手にするほど酔狂じゃ無ぇのサ」
彼は自分が今まで横になっていた寝床を指し、
「お前ぇはこっちで寝な。俺ァそっちで寝る」
「でもこっちの方が台所に近いし、朝ごはんの支度するのに・・・」
「奥の部屋だとて縁側を回りゃ済むことだ」
有無を言わせず、場所を交代させられた。
腑に落ちずに寝床の上に座っていると、
「小夜」
初めて名前で呼ばれ、飛び上がりそうになった。
「・・・ハイ」
見ると、襖を閉めかけた手を止めて微笑っている顔がある。
「お前ぇ、期待し過ぎじゃねぇのか?」
それが先程の私の言動を差していることぐらいすぐ判る。
カッと顔が熱くなると同時に思わず手元にあった箱枕を投げつけた。
が、相手が襖を閉めるのが一瞬早く、箱枕の角が襖紙をキズつけて転がった。
くっくっく、と襖の向こうで笑い声が聞こえている。
恥ずかしさと悔しさで汗が吹き出る思いで、布団被って寝ちまおうかと横になりかけた時、納戸の板戸が目に入った。
そこでようやく、彼がなぜ私をこちらの部屋に寝かそうとしたか、理由が判った。
横になり、有明行灯の蓋を被せ直して隣室の気配を窺う。
熱くなっていたものがすうっと冷める思いがした。
「あの・・土方さん?」
返事は無いが聞いている気配はする。
「なんで私をこっちによこしたか、判った。何かあった時、私を納戸に逃がすつもりでしょ?逃がしやすくしたのでしょ?」
彼が寝ている部屋から納戸に入るには、今私が寝ている六畳間を経由しなくてはならない。
そういうことなのだ。
「さぁな。肝心な時にガーガー寝ちまってちゃ仕方無ぇがな」
・・・やっぱり、そういうことなのだ。
嬉しくなって顔が笑ってくる。
「いいからもう寝な」
深呼吸するように、眠そうな声。
「うん。おやすみ」
いろいろ有った割には、その夜の寝つきは良かった。
「オイ、起きろ」
頭の上で声がする。
「うー」
寝返りを打ったら日差しがモロに顔に当たった。
眩しくて布団を引き被る。
「ねむーい・・・」
もう少し眠ろうとして、今の声は何だったんだろうと思い、
「あーーー!!」
飛び起きた。
眩しくて目が開けられない。
どうやら戸障子は全て開け放たれているようだ。
「うーー」
参った。
そういえばひとりじゃなかったんだっけ。
ああ、ねむーい。
私は朝早いのは苦手なんだからさー。
「おはようございまぁ・・ふ・・」
語尾があくびになる。
敷布団の上に正座して、抱きしめた掛け布団の暖かさが恋しい。
目をつぶったままあくびを連発し、なんとか目を開けようとしてしかめ面になる。
「・・・早いんですね」
「ナニ言ってやがるのだ。もう五つだぜ?」
そう言いますけどねぇ、明け六つの鐘が鳴るのははっきり言って日の出前、空がピンク色になるかならないか、時間で言えば午前4時頃。
それから一刻(=2時間)と言ったってまだ6時じゃないのぉ。
やめてよねー、そういう大時代な生活。
と、ぼやいて判る相手でもないか(諦)。
「すいません」
ぼーっとしているので、寝床から立ち上がったもののさしあたって何をすべきか考えつかない。
台所に行きかけて、はたと思い当たる。
「あー、ごはんの支度、これからだ」
これから米を研ぐのでは炊き上がるまでに一時間はかかる。
「めしは要らん」
声はさっきから庭の方から聞こえている。
初めてそちらへ顔を向ける。
「とんでもねぇ面だな」
・・・いきなり言われちゃったい。
寝起きなんて誰だってとんでもねーよ。
良く見ると彼は既に紋付羽織袴(つまりスーツだな・笑)を着込んでいて帯刀している。
(てことは私の寝ていた部屋に入って来て着替えたという事なんだけど、この時は寝ぼけていて気付かず)
「あれ?もうお出かけですか」
くしゃくしゃになったお下げを解きながら、縁側から庭に降り立つ。
「顔ぐれぇ洗ってから送り出したが良かねぇか?」
あ、そーか。
と思って井戸端に行こうとすると、舌打ちして、
「まぁいい、もう行く。不自由が有れば山崎に言え。俺ぁもうひと月がとこァ来られ無ぇがアイツは時々顔を見せるだろうからな」
不自由があれば、なんて、私に無いのは自由なのに。
判ってるんだろかこのオジサン。
まぁなんだか昨日来た時より機嫌が良さそうだし、鼻持ちならない所も(慣れたのかもしれないが)さほど気にならなくなったので意地悪は言わずにおこう。
「今のとこ何もありませんけど、もし屯所に幸が居たら遊びに来てって言って下さい。退屈で死にそうです。それから・・」
お下げを解いたら見事にソバージュヘアの出来上がり。
不思議そうに見ている彼の目は、このやろうと思うほど下睫が長かった(衝撃)。
甘いマスクってこういうのを言うんだろうな。
「それから、嫌いな私のこと気にかけて下さってありがと。あなたも大変ね」
フンと彼は鼻を鳴らし、
「妙なガキだぜ」
くるりと背を向け、木戸を出る。
「あんただって結構食えないオッサンじゃん。いってらっしゃい。私、舌打ちする人大嫌い」
木戸から首だけ出して送り出す。
憎まれ口を利きながら笑ってしまう。
「大きにお世話さ」
こちらを見ずに答えた。
普段着にしているらしい黒い木綿の羽織の肩が初秋の日差しにテカッている。
足早に遠ざかる主人の、さほどノッポにも見えないのは肩幅の広いせいだなと思った。
身長と身幅とのバランスが取れているからだ。
羽織の裾を翻して、大通りへ見えなくなった。
「さあて、と」
と私は今日一日をどう過ごそうか考え始めた。
天気の良い、気分の良い朝だった。
まず手始めに、
「もうひと寝入りしよっかな」
名案にひとり悦に入って、まだ温かい布団にもぐりこんだ。
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