もう50年ほど前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
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嬉しくてテンション上がっちゃって。
「土方さんにも言っとくから!きっとまた会いに来るって!」
すると藤堂さんはこれでもかと顔をしかめて、
「だからお前それはオカシイって言ってんだろ?俺はお前の旦那の首を取るって言ってんだっ!」
照れ隠しに怒る怒る(笑)。
斎藤さんが可笑しがってクスクス笑う。
「ねぇ、そんなに元気なら起きて夕飯食べなさいよ」
手を貸して藤堂さんを寝床から引きづり出し、その夜は予定を変更して、湯豆腐で一杯となった。
お酒を飲んだら出血が酷くなるんじゃないかと心配したけど、もう傷口は塞がってるからって。
それは斎藤さんが言ったんだけど(笑)。
私と藤堂さんがツッコミ合いながら壬生の屯所での昔話や馬鹿話で盛り上がるのを笑って見てた。
「こんな愉快な酒は久しぶりだ」
と藤堂さんが言い、
「全くだ」
と斎藤さんが答えた。
以前居たところでは、酒を飲むにも時勢を語らねば人では無しという雰囲気だったと。
「それでお前、無口だったのか」
藤堂さんが笑った。
湯豆腐の鍋は途中からハリハリ鍋になり、つくねの入ったうどんすきになり、五合徳利が三つ、空になって畳に転がった。
レンコンハンバーグは照り焼きにしたのが仇で、目を放した隙にフクチョーのお腹に収まっちゃった。
そしてたぶん、一滴も飲んでなかった私が一番最初に喋り疲れて寝てしまってた。
庭の水音で目が覚めた。
枕もせずに、うつぶせ加減に寝ちゃってたのは、眠いながらも結髪をキープしなきゃとは頭が働いたからなのかも。
おかげでヨダレ垂らしちゃったけど(爆)。
背中が妙に重くて、フクチョーでも乗っかってるのかと起き上がりながら振り向いたら、
「うわ!」
刀を抱えてどてらを被った斎藤さんが、あくびをしながら私の掛け布団の上に体を起こした。
「ヤだ、ちょっと・・・」
もしかしたら私の寝ている上に寄っかかって寝てたのか・・・(汗)。
「ていうか、酒くさっ!」
と顔を背けた時、肩先の赤い色が目に飛び込んで来て、自分が襦袢姿なのにようやく気付いたり(--;
「ぎゃ~!」
「朝っぱらから何喚いてんだ?」
縁側から藤堂さん。
顔と坊主頭を一緒くたに手拭いで拭きながら上がって来る。
私がパニくっているのを見て取って、
「おいおい、お前夕べ自分で脱いだの覚えてねぇのかよ」
「ええ~!うそ!」
「眠いからもう寝るぅ~ってんで、着物脱ぎ散らかしたまま寝床に潜ったじゃねえかよ」
・・・そ、そうだっけ?(←ちょっと思い出しかけてる・爆)。
「このまま寝たら着物がシワになっちゃう~って目の前でバサバサ脱いじまって。こっちは面食らったんだぜ?尤も、目の保養したヤツも居るがな」
長火鉢に炭箱から炭を継ぎながら斎藤さんを横目に見て、ニ~っと笑う。
笑われた方は・・・月代まで真っ赤なんだけど(--;
「見かねて斎藤が畳んどいたぜ。コイツ、そういうとこ常人とは違うからな」
見れば枕元に着物と帯がピシっと畳まれてある。
腰紐まで!
ひゃ~!
今度はこっちが赤くなる。
「二人して赤くなってねぇで。ホレ小夜ちゃん、ヨダレの跡付いてるぞ。顔洗って来いよ」
口元を指差された。
恥ずかしい~!
斎藤さんからどてらを引き剥がして、襦袢の上に着込み、井戸端で洗顔~。
寒ぃ~!
夕べ干しっ放しの洗濯物がカチカチに凍ってる~。
庭の隅のほうに、霜柱が立ってるぅ~!
と、房楊枝使いながら庭下駄でザクザク霜柱を踏んづけてたら(子供か)、斎藤さんも顔を洗いに出て来た。
それで、ふと気が付いたんだ。
「藤堂さん、一人で起きれたの?」
「ああ、なんとかな。しゃがんだり背中を丸めるとまだ痛むが、なんとかなるだろ。尤も、飲み過ぎるとジンジン痛むとは思い知ったが」
笑っちゃう。
「だから言ったじゃん。そんなに飲んで大丈夫なの?って」
「夕べは楽しかったからな。もう飲まねぇよ。坊さんに化けるならそうそう飲んでも居られねぇ」
は?
坊さん?化ける?
「朝飯食ったら出かけるわ。その納戸、妙なもんがいっぱい収まってるようだからな。坊主の格好ぐらい出来んだろ?」
「出かける・・・て?」
「言ったろ?江戸へ帰るのさ」
マジか!!
まだ抜糸もしてないだろう!と、斎藤さんと二人で止めるのも聞かずに、
「抜糸ぐらい途中で町医者頼みゃあ事足りる。心配要らんさ」
納戸の箪笥を片端から開けて旅道具探しを始めるではないか。
追いまくられて、どてら姿のまま夕べ食べ散らかした残骸を片付け、朝ごはんの仕度が済むまでには、・・・旅の修行僧が一人、出来上がっちゃってた(呆)。
上手い具合にこの家には、旅道具なんて売るほどある。
墨染めの衣に袈裟、網代の笠に錫杖まで、コスプレに関するものなら、なんでも取り揃えておりますしー(ついでに全てプロ仕様・爆)。
でも、
「何もこんな寒いときに出かけなくったって!外は霜柱が立ってるって言うのに!遠慮しなくたって、ここならいつまででも居ていいのに」
呆れてあいた口が塞がらない。
納戸の影でようやく着替えながら、ツッコミ入れまくり。
だって修行僧の格好って、素足に草鞋履きだっていうじゃないか!
凍傷になるだろ!
「そんなんで一日歩いたら足が凍ってもげちゃうんだから」
「お前なんかと違うよ。まあぼちぼち行くさ」
普段から冬でも素足な江戸時代人どもは朝からチャーハン喰ってます(爆)。
だって残りご飯ですぐ出来る朝飯ってさ!
お粥やオジヤは食べたくなかったし。
梅干とじゃこと有り合せの漬物を刻んだチャーハンは割と好評で、足りなくなって自分が食べ損なったぐらい。
「お前、路銀はあるのか?」
食事の後、斎藤さんが尋ねた。
藤堂さんが旅道具を油紙に巻いて腰に付けるのを見ている。
ってことは、もう引き止めるのは諦めてる。
「托鉢しながら行くんだ。なんとかなる」
傍らに置いた網代笠を退けると、黒い鉢が現れた。
托鉢用の鉢まで持って行くんだ(ていうかそんなものまであったのかウチの納戸・爆)。
「托鉢ってお経を読んで、お金とか食べ物とか貰うんでしょ?藤堂さん、お経読めるの?意外~!」
洗い物をしながら台所からなにげなく言ったら、相手が無言になっちゃって・・・。
「貴様、般若心経ぐらい唱えられんのか!」
斎藤さんがツッコミ入れてた(^^;
「般若心経ぐらいならなんとか。でも、それで誤魔化せる気がしない」
それ以外のお経なんて知らないってことなんだろう。
認識だけは妥当かも。
斎藤さんは溜息を吐き、
「持って行け」
懐から何か出して藤堂さんの手に持たせた様子。
「これは・・・」
「そうさ。伊東さんの所から出る時に盗み出した金だ。お前が持って行くのならその方が筋だろう」
掌の白い包みを凝視しながら、藤堂さんはしばし無言だった。
盗み出したものなら、素直に受け取れないのも判る気がしたし、そのことでまた言い争いになるのではないかとヒヤッとした。
「女と駆け落ちを装うために盗んでみたが、正直やはり盗んだ金を使うのは気が引ける。だが今更誰に返す当ても無い。お前が持って行ってくれれば助かる」
私の心配は取り越し苦労に過ぎなかった。
藤堂さんは素直に斎藤さんの気持ちを汲んだようだった。
「本当にいいのか?これだけ有ればお前・・・」
途中で言葉を飲み込んで、こちらを見たのはどういう意味だったのか。
「いいんだ。俺には今のところ、金を使うアテは無い」
「じゃあお前・・・」
と見詰め合って以心伝心出来る・・・って男同士じゃキモイんだけど(--;
その意味も判らなかったけど。
良かったな、とは思った。
判り合えないまま別れるのは悲しいではないか。
思いがけず幸が姿を見せたのはそんな時。
「おはよー。リサーチして来たよ、昨日の納豆の話・・・!」
縁側に坊さん姿を見つけてその場に固まった(笑)。
前屈みになると背中が伸びるためか、いででで!と喚きながら草鞋を履いている藤堂さんは、まったくもって頭の形は良いし、もともと目元涼しく顔立ちが整っている人ではあるので、お坊さん姿はカッコイイと思えるぐらい良く似合ってる。
眉間の傷痕は凄みがあるし。
惜しむらくはもっとタッパがあったなら・・・(失礼)。
まだ笠を被ってはいなかったので、藤堂さんだとはすぐ判ったみたいだけど。
「なななんで?藤堂先生、その格好は?どちらへ行かれるので?もう歩いて大丈夫なんですか?」
江戸へ戻ることになったと教えたら、やっぱり「抜糸も済んでないのに」と驚いてはいたけど、・・・引き止めるようなことはなかったな。
「夕べあんたが帰ってからイキナリ江戸行き宣言してさー。今朝になったら、今日すぐ出発するって言い出して。それからバタバタ準備して、準備が出来たらもう出発だっていうんだもん。それってどうなの?」
「さすが魁先生。面目躍如ですね。・・・って、今朝から準備始めて、もう全部揃っちゃうこの家も凄いけど」
と、私を見て肩をすくめる。
その表情は明るくて、昨日手料理を持ち帰った結果は良かったのだと思えた。
「でもあんた、今日は休みにしたんじゃなかったっけ?」
「うん。まあ、ちょっと・・。ちょっと時間が空いたんで。すぐ戻るよ」
なんだか歯切れが悪い気がしたのは気のせいか。
斎藤さんが視線を走らせたのを、私は気がついてなかった。
「でも、そういうことなら・・・。街を出るまで私が先導しましょうか?」
幸がそう申し出たのは、全くその場の成り行きだった。
でも言われてみれば、それは必要不可欠なことと思われた。
「露払いか?」
藤堂さんが眼を上げる。
幸が答える前に、斎藤さんが同意した。
「それがいい。何処の誰に見つかってもマズいだろうからな。コイツに様子を確認させて、危なげない道を選んで行くといい。とにかく都を出ないことには始まらん。街を出るまでは用心せねば・・・」
そっか。
死んだことになってる人だもんね。
そんなわけで、笠を被って数珠と錫杖を手にしたら本物以上にお坊さんな藤堂さんは、幸を従えて木戸を出た。
白いものがちらついているのに今更気付いて、思わず空を見上げる。
「ほらぁ、雪が降って来たよ。今日はやめとけばー?明日出発でもいいんじゃないの?」
「いいんだ、もう引き止めるな。これ以上お前に迷惑はかけられんよ。小夜ちゃん、世話になったな」
被った笠の縁を持ち上げて、藤堂さんが微笑んだ。
何しろ私の方が背が高いのでそうしてくれないと顔が見えない。
網代笠の上にとまった粉雪が、はらりと滑り落ちる。
「アタシは何もしてないよ。お礼なら幸に言ってよ。幸と斎藤さんと、あと沖田さん」
沖田さんの名前を言った時、藤堂さんはちょっと悲しそうな目をした。
だってもう、いつ会えるか判らないから。
たぶん、もう会えないのだろうから。
最後に何か話すことがあったかもしれないのに。
「近藤さんと土方さんにもな」
斎藤さんは家から三歩出るだけでも、刀を手挟んでる(笑)。
「見解の相違で敵同士にある時にはまともにぶつかっても、その後は、自身の立場を顧みず匿ってくれて怪我の治療をしてくれて、仲間の行方を知らせてくれて。生き延びたと判ったなら援助を惜しまん。なかなか出来ることではない」
大人な対応ってことなのか。
でも、恩に着ろなんて無理だよね?
だって自分に向けて大砲を撃とうとしたヤツだよ?
知り合いを殺されたんだ。
そんなこと切り離して考えられるのかしら?
と、私なんかは思うんだけど。
「言われなくとも判ってら。だから江戸に戻ることにしたんじゃねぇか。斎藤、お前、クソ真面目な顔して面倒臭ぇこと言うのは相変わらずだよな。相変わらずじじむせぇ」
やりこめたつもりらしい。
へへっと、僧形には似合わない笑い方をした。
「でもそうなると、さしずめ俺を助けた沖田さんは、・・・やはり始めからまともに戦う気は無かったってことか。やっぱり俺のことは子供としか見ちゃ居ねぇってわけだな」
さすがに今更反発するような口調ではなかったが、私などには計り知れない、昔からの遺恨を未だ引きずって居るような、そんな言い回しで。
心残りではあるような。
慰めるように幸が答えた。
「あの人はほら、主義主張カンケイ無いですから。それで敵味方を分けるということはしない人ですし・・・」
それで、終わりかと思った。
でもいつになく笑顔が硬くて、何か躊躇しているような風にも見え。
「そうだな。そういうことなんだろう。お前からよろしく言っといてくれ」
藤堂さんも何かスッキリしない様子だったけど、だからとて今更なんとも出来ずに話を終わらせようとしたんだろう。
そんなタイミングで突然幸が話し出したのは、もう二度と会えなくなる人に真実を伝えずに終わるのが堪らなかったからだと思う。
「藤堂先生はあんな状態で覚えていないかもしれませんが・・・」
俯いたままおずおずと話し出した声の調子が、妙に切羽詰ってた。
「というか、刀を抜きもしなかったと仰いましたが・・・。あの時、沖田先生が刀を抜かなかったのは・・・。それは・・・、それは沖田先生が・・・」
ごくり、と喉が鳴るのが判った。
それ程覚悟が要ることを話そうとしていた。
「沖田先生は・・・討たれるおつもりだったんです」
瞬間、そこに居た誰もが息を詰めた。
「あの時、藤堂先生は本気でした。凄まじい勢いで打ち込んで来られて。受けた私には判りました。なのに沖田先生には刀を抜く気配が無くて・・・。しかも私はあの時・・・刀を持たされていなかった」
その時の情景が眼前に浮かぶのだろうか、彼女は目を閉じ、
「あの瞬間の恐怖は・・・言葉に出来ません。正直もうだめだと思いました。思った時には体が動いていて・・・」
素手で、否、篭手を付けただけの腕で、藤堂さんの振り下ろす真剣を受け止めた、とは既に聞いた。
が、そういう経緯までは、聞いてなかった。
大きくひとつ深呼吸をして、乱れかけた息を整え、彼女がもう一度言った。
「沖田先生は本当に討たれるおつもりだったんです」
そこに居る誰も、何も言葉が出なかった。
「藤堂先生に討たれるつもりだった。それで諌めるつもりだったんです。近藤局長と土方副長に対する、それがあの人の抗議の仕方だった」
舞い落ちる粉雪が鼻先を掠め、黒い地面にとまって、融けて。
それでもまだ呆然と言葉を失っている私達に、彼女は気を使ったんだろう。
「でも、それを・・・私が助けちゃったから・・」
ぎこちなく、頬を歪めて無理やり微笑んだ。
睫毛にとまった雪の欠片を手で払って。
ああ・・・。
と、私には判ってしまう。
傷ついてる、幸・・・。
自分を責めてる。
それを気取られぬように、再び冷静に、まるで他人事のように状況説明を続けるのだ。
「私を連れて行ったのは、藤堂先生と相対するその時が来るまで、御自身の体力に自信がなかったからでしょう。不測の事態が出来した時に、自分の世話をさせるためだったと思います。私に重装備をさせたのは怪我をさせないため。でも邪魔されたくないから刀は持たせず、自分は・・・丸腰では相手も刀を抜かぬのは目に見えているから腰に二本差して行き・・・」
チッ、と藤堂さんが舌打ちした。
「袴も着けず、着流しに綿入れを引っ掛けただけでした。始めから、立ち会うつもりも無かったんです。でも私はそんな先生の思惑には気付かずに・・・」
言葉を選びながら告白する。
動揺を見せまいとするのが、余計痛々しい。
その印象を繕おうと、気を取り直したように冗談めいた口調になって・・・。
「実はあれからあまり口を利いてもらえてなくて・・・。私が余計な真似をして、生意気にも沖田先生を・・・助けちゃって・・・だから」
照れ笑いのつもりが・・・微妙に強張るのを隠しきれてない。
なんてことだろう。
こんなに傷ついてるのに、気付かないで居たなんて。
そしてあの、口から生まれてきたようなお喋りな人が、この命の恩人に口を利かないだなんて!
こんなに心配してる幸に?
心臓が潰れるような思いで居るのに?
今すぐ行って「ふざけるな!」と罵ってやりたい、あの大馬鹿野郎!
「そいつは聞き捨てならねぇな。とんだ不心得者だ」
藤堂さんは網代笠の下の向こう傷に、あからさまにシワを寄せた。
私の気持ちが伝わったというわけじゃない。
幸の話を聞けば、みんな同じ気持ちになるのだ。
斎藤さんだとて厳しい顔つきになっていた。
でも、彼は外に出られない。
会いに行けない。
でもだからって代わりに私が行った所でどうなるわけでもないのは判り切ってる。
あの判らず屋は私なんかの言うことを聞くような人間ではないのだった。
だからこそ、
「幸、戻って沖田さんに言っとけ。今からエラ~い坊様が説教しに行くから首ィ洗って待ってろと。ありがてぇお経を嫌ってほど喰らわせるから逃げるなと。それと、布施物はたんまり用意しとけとな」
そう言って笑った藤堂さんの、なんて男前だったことか!
顔を上げた幸の白い頬に、みるみる赤みが差し、
「はい!」
返事をするなり、あっという間に駆けて行く。
その後姿を目で追いながら、藤堂さんは白い歯を見せて笑い、
「そういうわけだから、俺はもう行くぜ」
まともに降り出した雪が、黒い僧衣の肩先を白く染めていく。
「ああ頼む。だが、説教し過ぎて醒ヶ井泊まりなんてことにならんようにな」
手をかざして顔にかかる雪を避けながら、斎藤さんも笑ってる。
「うるせぇ!当たり前ぇだ。馬鹿言うな。んな居心地の悪ィところに長居はせん」
歩き出しながら藤堂さんが怒鳴った。
斎藤さんが笑いながら怒鳴り返す。
「お前、坊さんなんだから言葉遣いにも気をつけろ!道中達者で!」
やり取りが可笑しくて、私はただバイバーイと手を振るだけだった。
藤堂さんが藤堂さんらしくて嬉しくて。
幸のために心を砕いてくれたのが嬉しくて。
最後に二人が笑っているのが嬉しくて。
その彼の歩き去る姿は、墨染めの衣が風を孕んでなんだか弾んでいるようで。
雪が降っているのに日は照っていて、あたりは白く輝いて見える(天使でも下りてきそうなカンジだ!)。
それもなんだか、幸先の良くなる印のような気がして。
「やっぱし、枯れない蔦ってあるよねぇ~♪」
雪の中に立ってるのも限界だったので、早々に避難。
「木蔦のことか」
後を追うように、縁側から上がって来た斎藤さんは、手拭いで額から月代にかけて拭い上げている。
「あれ?知ってんの?ていうかそういうの、あるんだやっぱし!」
「藤堂蔦とは葉の形が違うがな」
刀を外して床の間に置く。
「なんだー、そうなのか。惜しい~!」
そう言いながらも、私はなんだか肩の荷が下りた気分だった。
・・・まあ、まだ半分だけだけどね(^^;
でも、だいぶ気が楽になって、とりあえず掃除でもするかー、と散らかしたままの納戸の中を見回した時、背後の声が言ったんだ。
「邪魔者は消えて、ようやく二人きりだな」
はうっ・・・!
(((@△@;
背中にイヤーな汗が吹き出すのを感じながら振り返れば、懐手をした斎藤さんが戸口を塞いで・・・(怖)。
切れ長の一重の目がニンマリ笑って、
「さて、何して遊ぶ?」
!!!
ひぇぇぇ~!!
や、やばい!やばいよ!ひじょ~にやばい!
幸ちゃん、助けて~!(T-T)
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