もう45年以上前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。
・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
・感想&ツッコミコメントは「田毎の月」へでもこちらへ直接でもOKです~vもちろんメールでも。
・暇つぶしにネタばらしブログもどうぞ→管理人ざんげ室
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「照葉さんさぁ、盗んじゃえばいいんじゃないの?」
と、この計略を最初に口にした時、一番乗り気じゃなかったのは沖田さんだった。
島原の遊女を誘拐しようというのだ。
これは犯罪なんである。
自分のために私達を犯罪者にするなんてと、彼はどうしても首を縦に振らなかった。
当たり前の反応ではあった。
でも私は何が何でも照葉さんを島原から連れ出したかったんだ。
もちろん彼女の療養場所の確保と、それから沖田さん自身のためにも。
「じゃあ、このまま照葉さんは放っておくってことでいいのね?あのままあそこで最期を迎えるような事になっても、あなたは後悔しないのね?」
そんなことは考えたくないに決まっている。
でも、わざわざそんなキツい言葉を突きつけたのも、彼に行動を起こさせたかったから。
日向の匂いのする縁側で猫のおとがいを掻きながら、彼は困惑気味に作り笑いをした。
「そうじゃありませんよ。でもどうしようもないじゃありませんか」
普段はシリアスな話もへらへらと煙に巻いて切り抜ける人だが、この時はさすがに笑顔が硬かった。
「それはただ手をこまねいてるだけでしょ?何の言い訳にもならないよ」
諦めないで欲しかったんだ。
勝手な願望かもしれないけれど。
「小夜さんは性急に過ぎますよ」
恨みがましくそう言って口を尖らせる。
「へぇー、そんな余裕こいてていいの?急がなくっても?逢えるようになるまで待ってる時間があると思うの?」
我ながら意地悪な言い方だな。
「そう畳み掛けないで下さいよ。嫌なこと言うなぁ。いいですよ、自分で何とかしますから」
放っておいてくれと言わんばかりだ。
「自分ひとりで何とかなんてならないでしょ?」
更に追い詰めると、
「じゃあどうすればいいんですか」
投げやり。
むかっ腹を立てているのを・・・抑えている。
それが判る。
こんなことはめったに無い。
・・・焚き付け成功・・?
「私に手伝わせてよ。上手くやるから。ちゃんと考えてるからさ」
「あなたを引っ張り込むなんてこと出来ませんよ!何考えてるんですか!」
いいぞぉ!素になれ!
「いいじゃん、やりたいんだからさー」
やばい。
面白くなって来ちゃった(^^;
「良くありませんよ!この間だってあんな大喧嘩になっちゃって怪我までして。これ以上あの人を・・副長を怒らせたら大変ですよ。殺されますよ。ここを追い出されちゃいますよ!」
うう。
なんだか形勢逆転気味。
踏ん張れ小夜!
「平気よ。追い出されたってそれこそ何とかなるわよ。そうだ!沖田さんが雇ってくれればいいじゃん。そしたらアタシ、照葉さんのお世話係になるからさ」
「・・・そういう問題ですかっ」
苦々しく溜息をついた。
それから後は猫を相手に背中を撫でたり頬擦りしたり、
「お前のご主人はさっきから勝手なことばかり言ってますねー」
話しかけたり。
そうだね。
ホントに勝手なことばかり言ってごめんよ。
でもね沖田さん、
「今しか出来ないことって、在るような気がしない?今を逃したらもう後は無いってことが、世の中にはきっとあるんだ。そう思わない?」
目だけを上げて、彼は私を見た。
「でもそれはたぶんきっと大抵後から気付くんだよね。先に気付くのなんてきっと稀な事だよね」
何が言いたいんだと言わんばかりの迷惑顔。
「それでもやめておくの?これから先、ずうっと後悔しながら生きて行くつもり?」
何も返してこない。
眉根を寄せて、横目で私を見ている。
もうちょい煽るか。
「アタシだったら頭来るけどなー。『大丈夫、私には伝染りません』なんて気まぐれに調子いいこと言っちゃって、結局半端に見捨てる男なんて・・・」
「見捨てたわけじゃないでしょう?」
お!喰いついた。
ムキになってる。
もう一息か?
「同じことじゃん。私に言い訳したって始まらないよ。本人に伝わらなきゃ同じこと」
「じゃあ伝えてくれたらいいでしょー?小夜さんは禁足くらってるわけじゃないんだし」
屁理屈になってきたぞ。
「いいよぅ、伝えるよぅ。沖田さんがこんな風に言ってましたぁって。でも私なら信じないけどね。言い訳にしか聞こえないもん、そんなの」
しばらくの間、彼は憮然として、ほころび始めた庭の秋明菊を見つめていた。
もっと遠くを見ているような風でもあった。
それからきゅっと口を尖らせて、溜息をつき、
「ほんとに意地悪な人だな」
不愉快そうな顔つきで、こちらを見ないまますうっと立ち上がって出て行った。
キツいことを言ってしまったという自覚はあった。
命の先の見えている相手に、殊更時間の無さを言い募ったのだ。
怒らせたかもしれない。
でもそれが狙いだった。
諦めないで、骨のあるところを見せて欲しかったんだ。
私の勝手な願いではあったけれど・・・。
それから三日、彼は姿を見せなかった。
もうだめかなぁと思った四日目、
「用意できましたよ、隠れ家。養生するにはいい場所ですよぅ」
照葉さんを迎える家が見つかったと報告しに来た!
嬉しかった。
明るい笑顔に惚れ惚れしたもんだ。
「やったぁ!それでこそ男の子!」
「あのねぇ、言っときますけど私は歴とした男ですからね?男の『子』は余計ですよぉ?『子』はぁー」
いつものおどけ口調に戻って、楽しそうに笑った。
それが七日前。
じっとチャンスを狙って(幸を口説いて・笑)、この日が来た。
失敗は許されない。
手が後に回ってしまう。
沖田さんは詰め腹切らせられかねない。
おおっと!
だめだめ、イメトレはポジティブにしないとね。
失敗した時のことなんて考えない。
全ての道は成功へ続く!
なんとしてでもこの人を連れて帰らねば。
「はじめまして」
と、小夜が言ってるのを聞いて、正直驚いた。
これだけ肩入れするからには会ったことぐらい有るんだろうと思っていた。
会ったこともない人間のためにここまでするなんて。
小夜、アンタって人は。
お節介というか浪花節的というか物好きというか血の気が多いというか暇というか。
続く言葉が有り過ぎだぞ(爆)。
後から思えば、ここで少しはおかしいと思えば良かったんだな。
日頃からこういうことをやりかねないヤツだと思っていたから、不思議に思わなかった。
すっかり騙されていたんだ。
二人がかりで何と納得させたのか、お夏さんが照葉さんの髪を結い始めた。
こちらは髪も元通りのポニーテール、襦袢から男物に替えて袴も着けた。
丸腰姿はちょっと間抜けだけれど、力仕事には都合がいいかも。
私が着てきた小夜の着物は照葉さんには明らかに大きかったが、おぶってしまえば判らないだろう。
彼女の手荷物を小夜がまとめて準備万端整ったのは、つるべ落としの秋の陽も落ちて、店の中が賑やかになってきた頃。
「じゃあ西門の外で」
私とお夏さんは来た時の通り、店の奥を通って裏口から出ることにした。
照葉さんの首に木札を掛けて、背負う。
軽い。
軽過ぎる。
この時代の女の人は皆、ほとんど小学生並の体格だけど、それにしても軽過ぎて切なくなるくらいだった。
お尻を支えた手に骨が当たる。
遠慮がちに肩に置かれた手も緊張で硬くなってる。
肩の筋肉に刺さりそうなぐらい。
この緊張をほぐせるのは沖田さんしか居ないのかもしれないな・・・。
・・・。
早く帰ろ。
「大丈夫?走れる?」
私が無言になったのが不安だったのか、小夜が訊いて来た。
「見くびって貰っちゃ困るな。何のために毎日鍛えてると思ってんの?ご要り用ならこのまま一晩中でも走れるさ」
言いながら、あれ?と思った。
なにげにやる気が起きてしまった自分に苦笑。
これも小夜の計略のうちだったのか。
まんまと乗せられてしまったのか。
・・・ま、悪い気はしないけどさ。
「OK!気をつけて」
風で飛ばないように簪で手拭を照葉さんの髪に留め、納戸を抜け出す。
仕事は九割がた終わったと思っていた。
幸と照葉さんが入れ替わり、お夏さんのお弟子さんの具合が悪くなったという設定。
偶然居合わせたと装って、幸が病人をおぶって島原を出るという手筈。
幸は島原出入り許可証の木札は不要。
入るとき女装をさせたのは照葉さんが島原を出るための木札を手に入れるためv
後は門を潜れば良いだけの話だった。
来た時の通り、そちらの三人は店の奥を通って裏口から、私は尋ね人が居なかったふりをして店の表へ。
「空振りだったわ。ごめんなさい。他を当たってみます」
帳場の前を通り、下足を受け取ろうとたたきで待っていると、土間に立っていた店の半纏を着た若い衆が、
「奥へおいでどしたか?新選組の皆さんはお二階にお集まりどしたが。ご案内しまひょか?」
うげ。
居るのか。
やばいよー、早く出なくちゃ。
「え?あ、そうでした?・・・あのー、いいえ、いいんです」
我ながらしどろもどろだよ(^^;
落ち着けー!>自分。
「ええて・・・お人捜しでは?」
「そ、そうなんですけどぉ、もう・・あの、いいんです。時間無いから」
そんなこといいから早く草履出せよ!
と言いたいのを我慢して、あははーと笑って誤魔化す。
このわずかな時間のロスが、この夜の計画に多少の変更を生じさせることになった。
ようよう、草履をつっかけ店を出たその時、軒行灯の灯りから浮き上がるように、知った顔が。
「・・・あ!」
知らぬふりをすればそちらも声を掛けなかったかもしれない。
だが、いきなり目が合ってしまったのだ。
無視も出来ずに最初に声をあげたのは私だ。
相手は怪訝そうに眉を寄せて、
「あんた、こんなところで何してるんだ」
斎藤さんだった。
羽織を着ている。
黒紋付だった。
行灯の灯りに映る光沢が羽二重のそれだ。
「えーと、ちょっと散歩」
それにしても、新選組の誰かに会うのは想定の範囲内だったが、それがまさかこの人とは。
「散歩・・・って、ひとりで?幸は一緒ではないのか?」
この様子では幸達には行き会わなかったようだ。
良かった。
私ひとりの存在を誤魔化せばいいのだ。
そう思いながら肩をすくめて見せると、彼は呆れて、
「店に上がったのか?」
と言ってから、思い出したように敬語になって、
「沖田さんの使いではありますまいな」
抱えていた風呂敷包みを見て言った。
この店を沖田さんの通っていた店とは周知のことなのだろうけど。
馬鹿にしたような言い方がカチンと来たので開き直っちゃう。
「だったらどうなの?本人が来れないんだもの、私が使いに来たとして何が悪いの?文句あるの?」
売られた喧嘩は買うぞ(怒)。
すると相手は一瞬言葉に詰まってから、きまり悪そうに咳払いをひとつして話を変えた。
「先日は沖田さんとは会えましたかな?」
あ、そうだった。
「この間は無理を言ったのに骨を折ってくれてありがとう。・・・始めにそれを言うべきだったわね。でも、あなたがいけないのよ。人を疑うようなことを言うから。私は沖田さんの使いでも何でもないのに」
返事を待ったが言葉が出ない。
戸惑ってるみたい。
女の子に面と向かって非難されたことなんて無いのかもね。
「でも、自分はどうなのよ?冷やかしに来たんじゃないのー?」
「いや、それは違う。これから会合があって・・・」
他の店に向かう途中だと言う。
店先で立ち話も邪魔になるので話しながら歩き出した。
本当は西門から出て幸達と落ち合う約束だったのだが仕方ない。
向こうが無事に済むなら照葉奪取計画はほぼ成功。
私が足止めを食うことぐらいはご愛嬌。
相手がちょっと手強いけれど。
斎藤さんは私を家まで送って行くと言い出した。
「会合があるって言ってたじゃない。大丈夫なの?」
「私的なものですからな。遅れたとて左程差し支えは無い」
「私的な会合?そんな立派な紋付着て?」
単なる飲み会じゃないんだなと何気なく言ったつもりだったのに、斜め前を行く斎藤さんの歩みが止まる。
振り返ってちょっとだけ、口元を緩めた。
「なんなら土方先生には黙っておいて下さいますかな」
・・・?
どういう意味だろ?
意味深な瞳がじっと見ている。
種明かしはしてくれなそうだ。
「それは・・・取引に使えるってこと?私が喋らなきゃそっちも黙っててくれるってこと?」
すると今度は明らかに口元が笑って、
「まあ、そういうことです」
歩き出した。
ふーん。
なんだか意味は判らないけど、
「この間、沖田さんを呼んでくれた時ね、あれ、バレたの。知ってた?」
「そのようですな」
ふーん、知ってるんだ。
誰から聞いたのかな?
まさかまた沖田さん本人じゃないだろうな。
「でも私、斎藤さんの名前は出さないでおいたから」
また、歩みが止まった。
こちらを向く。
振り返る度、鬢付けのつやつやした結髪に店々の灯りがオレンジ色に映るのがきれいだ。
「それは俺に恩を売っているのか?」
おおっと、敬語を忘れ始めましたよ?(爆)。
「あの時はひどい騒ぎだったのよ。土方さんの唇、切れてたでしょ?」
きっと修羅場になったとは思ってるんだろうな。
沖田さんと土方さんで殴りあったと思ってるのかもしれない。
どのように話が伝わっているのかは判らない。
「あれね、私が殴ったの」
普段あまり表情の出ない顔が微妙に強張った(笑)。
「だから今度も気をつけてね」
にーっと笑って見せたら、
「そ、それはどういう・・・?」
「喋ったらどうなるか判らないよ~?ってこと」
「俺を脅迫するつもりなのか」
「そう」
固まっちゃったよ(笑)。
「そっちが提示した条件じゃ取引としてはこちらが弱いもの。紋付で私的な会合なんて、誰に知られても良い情報かもしれないし。黙っててくれってそっちから言い出すなんて思わせぶりなだけだしね。それが取引になるかどうかなんて私には判断付かないもの」
まだリアクションが無い。
「だから、喋ったら何するか判んないぞーって判り易く脅迫してみたわけ」
笑。
それほど隠したい訳を聞かれた。
大門を出て、曇天で月の無い道を歩く。
今頃幸達は沖田さんと落ち合っているだろうか。
島原から離れるほどに真っ暗なのだが、斎藤さんが一緒に居るおかげでなんとか歩けている。
ひとりでなんか歩けやしない。
この人はどうやって辺りが見えているのか、不思議なくらい。
幾度か地面の凸凹につまづいたのを助けられた。
前を歩いているくせに私がコケそうになるのが良く判るなと思ったり。
「沖田さんが島原から女の人を身請けしようとしてた話は聞いてるんでしょ?土方さんがそれをやめさせたことも?」
「ああ」
暗闇から返事が返る。
表情は全く見えていない。
でも落ち着いて・・・優しい声だった。
「どんな人なのか気になってたの。会ってみたかったの」
これは本当のことだ。
照葉さんの身請け話が沖田さんの単なる慈善事業なのか否か、確かめたかった。
もしそうならちょっとガッカリだし。
そうだとしても、彼の診療のカムフラージュにはなると思い、奪取計画を断行したわけだけど。
「だから見に行ったのか」
斎藤さんは、見た目は大人っぽいけど声は若い。
というか少年っぽい。
それが優しく聞こえるのかな?
「そう。でもやめたの」
「やめた?ではそれは?」
私が抱えていた風呂敷包みが気になっていたらしい。
「これは小道具。届け物だって言って店に上がらせてもらったの。でも・・・そんなことしても。会ってどうなるものでもないし・・・」
なーんて、憂いを作ってみました(爆)。
彼はちょっと沈黙し、それから、
「まあな」
と曖昧に答えた。
何か考えているようでもあった。
しばらく無言で歩いていたと思ったら、
「あんた、あの人に惚れるのはいいが覚悟が要るぞ」
突然何を言い出すのかと一瞬どきどきした。
覚悟と言う言葉に過剰に反応してしまった。
まさか沖田さんの病気のことを知っているのではないかと思ったのだ。
でもすぐ思い直した。
覚悟の意味が違うんだった(^^;
ていうか「惚れるのはいい」って何さ。
あんたは不倫を奨励してるのか(爆)。
障害があっても愛を貫けというのか。
斎藤さん、・・・ロマンチスト。
あ、ダメだ、笑っちまう。
演技演技。
「もう諦めてます。立場上、端から諦めなくちゃいけないし、沖田さんには好きな人だって居るんだし。でもその人の顔を見ればもっとちゃんと諦めが付くと思ったの。結局そこまで勇気が出なかったんだけど・・・」
うくくく(←笑ってます)。
いやー、我ながら口から流れ出るような出任せだよ(照)。
「だから今日あそこで会ったことは内緒。誰にも内緒ね」
うーん、出任せが上手くまとまったぞv
今頃、幸達は無事に沖田さんの隠れ家に到着している頃だし、私がその場に居なくても何とかなっているはずだ。
照葉さんの手荷物、持って来ちゃったけど。
想定外のアクシデントは有ったものの、おかげで私は思いがけず家まで送ってもらってるし、これは成功のうちに入れてOKなんじゃないか?
顔が笑ってくるのを見咎められないうちに斎藤さんとは別れてしまいたかったのに、彼は用心深くて、侵入者が居ないかどうか確かめてからしか私が家に入るのを許してくれなかった。
火鉢の熾き火から行灯に火を移して、ようやく相手の表情が見える。
側に立って、付け木の火を吹き消すのを見ていた。
「ありがと。もう大丈夫。会合に遅れちゃったね。ごめんね」
「あんた、いつもこうなのか?」
「こうって?」
何のことを言われているのか判らない。
斎藤さんは相変わらずこちらを見下ろしている。
細縞の袴に行灯の灯りが反射している。
「いつもこうしてひとりなのか?」
ああ、そういう意味か。
「まあ、基本的には・・・。この子と二人だけど?」
座敷の暗がりからいつの間にか現れて、膝に乗ってきたフクチョーを抱き上げる。
いつもは連れないヤツなのに、ザラザラした舌で顔を舐めて来るのはお腹が空いているのかな?
「それに三日に一度くらいは幸も居るし」
三日に二日はどこに寝泊りしてるか私にも判らないけどね。
アイツの行動は近頃ますますナゾだ。
聞き出すのも嫌がられそうで億劫だし。
生活に支障は無いので放っておいてる。
「どうして?かわいそうだとでも思った?」
あなたに放って置かれてる人も居るんでしょ?
とは言わないで置いた。
言わなくても自分で気付いたみたいだ。
「いや・・・」
それ以上は何も言わずに帰って行った。
なんだろ?
なんかテンション低くなっちゃってたような・・・。
気にしちゃったろうか?
もう慣れたから心配無いよとでも言ってあげれば良かったかな。
さて、家に帰って来たのはいいけど、沖田さんの用意した家の場所を知らないので後から駆けつけるわけにも行かない。
こちらから事情を連絡する術も無い。
諦めてフクチョーと二人でお茶漬けをかきこんでいるところへお夏さんが来て、照葉さんの状況を知らせてくれたのは、夜もだいぶ更けてから。
「見てましたえ。斎藤センセに捕まらはって。難儀どしたなぁ。上手いこと誤魔化さはったん?」
「まあ、なんとかね」
いろいろ誤解はさせちゃってるけどな(^^;
沖田さんは外泊を禁じられているので屯所へ戻ったらしい。
照葉さんには幸がついているそう。
お夏さんは私が持ち帰ってしまった彼女の荷物を取りに来たんだって。
また戻って幸を帰すからと言ってくれた。
今夜は泊り込んでくれるそうだ。
ありがたかった。
そういえば、付添いのローテーションまで考えてなかったな(おい!)。
沖田さんが外泊できないんじゃちょっと大変だ。
私もそうそう家を空けるわけには行かないし、お夏さんにだっていつまでも迷惑かけるわけには行かない。
うーん・・・。
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