もう45年以上前から管理人の脳内に住み着いてるキャラクターの、稚拙な妄想小説のお披露目場です。
ご笑覧下されば幸いです。

・時系列に置いてあります。
・但し最新作は先頭に。
・中断&書きかけ御容赦。
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・暇つぶしにネタばらしブログもどうぞ→管理人ざんげ室 


お正月もまだ十日だと言うのに庭の梅の老木ももう花を咲かせ始めていて、路地モノで新春気分が可能な陽気(笑)。
西暦で言ったら一体今は何月何日?
江戸時代生活も長くなって、もうワケ判らん(タメイキ)。


去年のお正月は怪我のせいでどこへも遊びにも行けなかったので、今年は絶対晴れ着でお出かけしたいと思ってたんだ。

それをずっと前々から口にしていたので、とうとう根負けした山崎さんが十日戎(とおかえびす)に連れて行ってくれることになった。

十日戎って関東人には馴染みは薄いけど、関西ではとってもポピュラーなお祭りらしい。
でも、別に山崎さんが連れて行ってくれなくても良かったんだけどさ。
山崎を私用に使うな!といつも口うるさく言われているし。

だから、幸と二人で行っていいかどうか確認のつもりだったんだけど、人混みに二人だけで行かせるのは不安だからとかなんとか言って、結局三人で出かけることになったの。
きっと自分もオフ日だったから、一緒に行きたかっただけだよね。

「いや、だからそれはアンタと一緒に行きたいってことなんだってば」

幸は人混みを嫌ってか、そう言って一緒に出かけるのを渋ったんだけど、

「連れないこと仰らんと。私は町方の格好(なり)で出まっさかい、幸はん、ひとつ頼んますわ」

と言われて納得したのは、どういう意味だったのか。

ゑびす神社に向かう道々、にんまりにやけた彼女の嬉しそうな目を見て、気が付いた。

このメンツでは彼女だけが二本差になるのだ。
それって用心棒っぽく見えない?
まあ何れにしろ、見た目的にはってことだけどさ(実際の用心棒は山崎さんです・笑)。


町を歩くとすぐ気がつくんだけど、近頃やけに刀を腰にした侍姿が目に付く。
この日はお祭りだから普段より人出が多いわけだけど、それにしたって二本差の割合が多い。

幕府の軍隊(=旗本+幕府方の各藩兵)が大坂やら京都の周辺に分宿駐屯しているせいだ。

居候の世話をする京坂の人達も大変だろうけど、ただただ開戦を待っている身も辛いよね。
お正月だもの、さぞかし故郷に帰りたいだろうな。
暇つぶしに物見遊山に出て来る気持ちも判らなくはない。



五条大橋の袂から四条大橋を臨むと、川向こうには焼け跡が見えている。
昨年の祇園の火事の跡だ。
消火の時は新選組も出動したそうな。

・・・何でも屋さんは忙しい。
でもそれで京都の皆さんが感謝してくれるってことは・・・・あるのかしら(^^;



「きょーおっのごーじょおっのはーっしのうっえー♪」

「アンタここ通る時、毎回それ唄うよね?しかもいつもマーチ風なアレンジだよね?」

首巻きの覆面から目だけ出して幸が見てる。
呆れ口調。しかも半笑い。

「いいじゃん元気でー。だってせっかく五条大橋なんだからさー」

ここで義経が弁慶相手に華麗なるワイヤー・アクションを繰り広げたわけだよ(違)。記念すべき場所なワケだよ・・・と、見れば相手は寒そうに懐手をしている。

確かに、立春を過ぎ梅の花も咲く頃とはいえ、川を渡ってくる風はまだ冷たい。
じゃあってことで、

「春ーは名ーのみーのー♪」

と曲を変えたら、つられて、

『風ーの寒さやー♪』

とハモってから、

「あああ!ダメダメ。やばいよ。目立ち過ぎ」

歩みを止めぬまま、懐に両手を収めたままで肩をすくめた。

人が多いのだ。
こんな人混みで歌(唱歌)など唄っては人目を引いてしまうと言いたいらしい。
唄わなくても充分目立つとは思うけどね、こんな凸凹トリオ(爆)。

「小夜ってば、やけに元気いいよね。めかし込んじゃってさ。・・・ってか、めかし込んでるから元気いいのか・・・」

最後はそう独り言ちて、紬の首巻きからゴジラのような水蒸気を吐いた。

そうそう。そういうことなのよ。
今日は気合入れたんだー。
出かける前にお夏さんに頭に結ってもらって来たんだー♪
江戸風の銀杏返し。
手柄も絞りの2色使いでかわいいのー。

でもこの頭、土方歳三デザインなんだな・・・。

こないだ鏡の前でいろいろやってたらさー、髪がぐずぐずになっちゃって収拾つかなくなっちゃってさ。
横で見てたヤツ(土方さん)が応急処置してくれたんだよね。

くやしいけど、こういう和物のセンスって現地人(江戸時代人って意味・笑)には敵わないから任せちゃった。
それがなんだか気に入っちゃって・・・。

幸にも今までで一番似合うって言われたんだもん。
全体的にコンパクトで、鬢(びん)もタボも、つまりサイドもバックも、膨らましたり張り出したりしてなくて、自然でタイトな感じ。
前髪は多めに取って、髷も大きめ。

おっとりした京風な結髪とは全然違うテイストになった。

着物はお正月らしく柔らかモノ。
パステルピンク地に白でねじ梅を詰めた小紋柄。
更にその下に卵色に白と灰色のよろけ縞の小紋を着込んでいる。

袖の振りから襦袢の紅色(麻の葉柄)がチラチラ覗いて、きれ可愛い~♪
深紅の縮緬の半襟には梅の刺繍が詰め込んであるし、帯は朽ち葉色に深緑の松。小柄にびっしり渋く織り出してある。
それをちょっと大きめに結んだ。

「土方歳三プロデュースの着物!かぁ」

と、幸は近頃そればっかり攻撃してくる。

夏以来、着物の色柄もサイズ指定にも彼のチェックが入り、私は出来上がりを宛がわれるだけ。
確かに彼女の言う通りではあるんだけどさ。

「どっかの展示会の呼び物みたいだな。さすがに似合ってるけど。オリジナル・ブランドだけのことはあるね」

覆面から覗く切れ長の目が笑ってる。

「どんな着物だってモデルが良くなきゃこうは行かないわよ」



「寒くない?」

花冷えと言うのだろうか、お正月から暖かい日が続いていたのだが、この日は朝から曇って気温が低かった。

この時代、女の人は羽織を着ない。
私も藤色の紬の生地をスカーフみたいにふんわりと、風除けに首に巻いているだけなので、出掛けに幸がそう訊ねたが、

「心配御無用!」

綿入れの長着なので、見た目ほど寒くないんである。
それに、

「寒い時はこうやって、山崎さんにくっついて歩くからー」

へっへっへー、とウインク。
家を出たときから、山崎さんと腕組んで歩いてんだもんね。

そのぷにぷにした二の腕にぎゅーっと抱きついたのに、

「ええなー。若いおなごはんはええ。さすがに京の都はべっぴんさんがぎょうさん居てはる・・・」

にんまり笑って・・・辺りを見回しているではないか・・・。

心ここに有らず、といった体(ってかヨダレ垂れそう!)。
ムカツク!

「ちょっとー!なによ。どこ見てンの?私と歩いてるのがいいんじゃなくて、京都の女の人がいいってワケ?」

腕を引き寄せたらようやく我に帰った様子で、

「あっ!い、いや・・・そ、そういうことでは。ほんまですわ。小夜はんとこないに歩けて私はシアワセもんやー。・・・ほんまでっせ」

こちらを見上げて(笑)風除けの頬かむりの下から笑った顔が引きつり気味。
幸が噴出した。

「出張帰りなんだから大目に見てあげなよ。久しぶりの京都なんだもん、息抜きしたいんだよ山崎さんだって」

「幸アンタ何言ってんの?お夏さんというものが有りながら、他の女に目が行って良いワケ無いじゃん。それに今日は私が借りて来たんだから。私以外の女に気を取られてちゃダメなの!」

山崎さんにくっついてるのはそういう意味もある。

だって夜にはちゃんとお夏さんのところに送り届けるって約束したんだもの。
悪い病気がでて、その辺の綺麗どころにフラフラついて行かないように、しっかり監視しなくちゃね。

「目付役かー。かわいそうにな。久しぶりのお休みなのに」

幸って普段男の中で暮らしているせいか、近頃とみに思考回路が男の人に近い気がする。

「そーんなことないわよ。お夏さんのとこで息抜きすりゃいいじゃん。カノジョなんだからさー。他の女の人のことなんか鼻の下伸ばして見とれること無いの!」

「仰る通りで・・・」

後を歩く幸を睨んだ私の顔が恐ろしかったのか、隣の山崎さんがしおしおと返事をした。

「相変わらずきっついお子や。かいらし(可愛らしい)顔してからに・・・」



彼は去年の11月から近藤局長のお供で広島方面に出張だったの。
局長が戻った後も監察の皆さんが交代で現地に留まって、第二次長州征伐の進捗状況をレポすることになっているらしい。

進捗状況、と言っても今のところまだ開戦もしていないみたいだけど。
将軍さんがまだ大坂に留まってるし。
戦争前の交渉中なのかも。和平工作とか。

去年の閏5月に大坂入りしてるから、かれこれ7ヶ月はそんなこんなで足止め食ってるわけだ将軍家茂さんは。ご苦労様です。

なのに、幕府軍が長期駐屯しているせいで米の値段が、つまりは物価が上がって日々の暮らしが苦しいと庶民からは大ブーイングが起こっているらしい。
京都ではそれほど感じないけれど、大坂ではみんな気が立ってて物騒なんだって。
これは山崎さんから聞いた話。


でもなんだかピンと来ないのは、京都のお正月が穏やかだから。
五条大橋を渡って川端を北に歩き始めるとじきに祭りの賑わい。

最初、何を叫んでいるのか判らなかったのが、だんだん近付くにつれ、

『商売繁盛でササ持って来い』

さざ波のように繰返し聞こえてくる。

「きゃー!何アレ?何アレ!」

お祭りだー!お囃子だー!興奮するぅ!
山崎さんが嬉しそうに笑った。

「あれが京の“ゑべっさん”やがな」

きゅっと、陽に焼けた目尻に皺が寄るのが優しいのよねv
山崎さんと一緒にお祭りに来れるなんて嬉しい!嬉しーい!

「行こ行こ!早くぅ」

彼の腕を引っ張り、草履を鳴らして走り出す。



それ程広い敷地ではない境内に人がごった返していた。
幸は見ただけで戦意喪失。
門の筋向いの家の壁面に寄りかかって、

「私、ここで待ってるからー。気にしないで楽しんでおいでよ」

神仏に願をかけるようなキャラじゃなし、腰に刀を帯びて人ごみに入るのも億劫なんだろう。


人の波がうなりながら揺れている感じ。
着飾った人達が争ってお参りする、その流れに身を任せているのがやっと。
山崎さんの腕につかまっていないとはぐれそう。
ってか、群衆の中では山崎さん・・・埋もれちゃってるし(爆)。

出掛けに、金目の物は持つな、と言われた理由が判ったわ。
これじゃ懐の中なんてスラれ放題よね。

髪飾りが飛んでいかないか、とか、髪が潰れやしないか、とかパニックになりかけていると、いつの間にか外へはじき出されていたり(^^;
私はきゃーきゃー大騒ぎしていただけだったのに、山崎さんてばいつの間にか、ちゃーんと飾りの付いた福笹を手にしているではないか。

「あれ?いつのまに買ったの?それともまさか誰かのをどさくさ紛れに持ってきちゃった?」

「何言うてはるんですか。さっきちゃんと買うてましたがな」

鬢(びん)の乱れを掻きやりながら、笹を差し出す。

青々とした笹の枝に、縁起物の紙製の鯛、小判、俵、お多福、そして恵比寿さんが糸で吊るしてある。

「あれ?一本だけ?お夏さんちへは?」

「あこは大所帯ですさかい。私が持って行かへんでも間に合うてますわ」

照れ隠しなのか殊更ぞんざいに言って、お参りのときに取った頬かむりを再び被る。

町人髷に地味なお召しの御対を着流しているだけで町方の人にしか見えないというのに、更に用心深く頬かむりをするのは仕事柄の習性なのか。

・・・単に寒いだけかな(笑)。

福笹を手土産に境内を出ると、幸が居ない。
どこに行ったんだろうと見回しているうちに、

「こっちこっち」

呼ばれて見れば、陽の沈む方向に手を振る人影。

「何してンの?」

「こっから見ると去年の祇園の火事の焼け跡が見えるんだ」

言いながら手を伸ばした彼女に福笹を手渡し、同じ方向を見やる。

「何も無いよ?」

「何も無くなったんだよ。あそこに歌舞伎座があった。四条通を挟んで、北と南に一軒ずつ向かい合わせに。どっちも焼けた」

「舞妓や芸妓はんだけやのうて、役者はん等も焼け出されよったんやな。難儀なことや」

山崎さんの言葉が終わらないうちに、福笹を肩に担いで幸が歩き出した。
帰り道とは逆だった。

「どこ行くの?」

「去年の4月に焼けた後が今どうなってるか、見てみたくない?四条大橋回って帰ろうよ」

もう夕暮れ時だった。
家々の・・・否、店々の軒行灯にはチラホラ灯が入り始めている。

気が付けば・・・花街のど真ん中に居た。

ゑびす神社って実はこんなトコに在ったのね(^^;
道理で参拝客に女の人が多いと思ったよ。
しかも白粉クサかったし。

ていうか、もしかして山崎さんの十日戎参りは最初からそれが目的だったのか?

「幸はん、ええこと考え付かはりますなー。そらオツな話や。町の匂いだけでもかいで行こかー」

町のニオイって・・・。
速攻話に乗ってるし(--;。

「もう夕方だよ?早く帰んなきゃ。物騒でしょ」

悪さをする魂胆じゃないかと思って、一応引きとめようとしたのに、

「大丈夫だって。私等二人で出歩くよりよっぽど安全」

幸の絶大な信頼の理由はこの後すぐに判ることになる。




突然、目の前にぶわっと眩しいものが現れた。
色の洪水。

歩き出して程なく、横道からゑべっさん帰りの三人連れが歩き出てきたのだ。

抜き衣紋に白粉匂う、三本足のうなじも顕わな黒紋付の芸妓さん2人と、連れの男性。
つまり、綺麗どころを両手に抱えた、たぶんお金持ち。

「ええ身分やなぁ。こっちゃの三人組みとはエライ違いや」

黒髪と白塗りのうなじのコントラストに、目の覚めるような襟裏の赤。
着物の黒、帯の金。
豪華な裾模様と、褄を取った裾からこぼれる緋の襦袢。
つやつやした潰し島田の芸妓さんの肩に手を回し、真ん中の男の人は青磁色の柔らかモノの御対だ。しかも長羽織。

山崎さんでなくても見とれるよ。うん。
私が突っ込み忘れるぐらい(エライ違いで悪かったな!←後から気が付いた・笑)。

そんなわけで、何かへンだと気が付いたのはしばらく経ってから。
みんな、前を行く人達の、煌びやかさに見とれていたの(笑)。

こちらに背中を向けて歩いて行く三人連れの、真ん中の男の人は総髪で、しかも肩までの髪を結わずに流している。

そんな髪型見たこと無い。
でもまだそれはこの時代に来て初めて見た髪形ってことで(現代だったら普通にロンゲ)、ただそれだけのこと。

その三人連れは右に左に千鳥足で、大層賑やかにきゃあきゃあと歓声(嬌声?)を上げていたので、てっきりお神酒が入って酔っているのだと思っていたのだ。

そうじゃないと気付いたのは、きっと私が最後だった。

真ん中のロンゲのお兄さんが常に左によろけるのを、芸妓達がその都度支えて右に振れるのだ。
その度にきゃあきゃあ言うのと、よろける本人が半ば楽しんでいる様子なのが、ふざけているように聞こえていただけだ。

そこまで気付けば原因はすぐに判った。
左足を引きずるのである。
それを察して、山崎さんはそれ以上の軽口を慎んだのだ。

打ち合わせをした訳ではないけれど、我々三人とも前の一行を見守るような気持ちになっていた、と思うのは私の思いいれが過ぎるかな?
なのでお祭りのせいで余計人通りの少なくない黄昏時の宮川町通り、他の通行人とすれ違う時は内心ヒヤヒヤしてたんだよね。

前の一行がそんな歩き方なのを追い越しもせず、ゆっくりとそぞろ歩いていたのもそんなせい。
でもどうしたって前との距離は縮まる一方。

前を行く男の人の髪に見え隠れしていた羽織の紋が、鯛と釣竿の意匠(恵比寿様の持ち物)の飾り紋なのに気付いて、ひゃー!おしゃれだなぁと感心していると、

「うぬら、退かんか!」

前方からそんなものが歩いて来ていたとは思いもせず。

きゃあ!とひときわ高い悲鳴が上がった。
やばいぞー、なんかちょっかい出されてるぞー!と思ううちに、

「ちゃらちゃらしおって目障りな」

平手が飛んで来た。
しかも後を歩いていた私にっ!!!
なぜー!?

後から気付いたんだけど、その時のフォーメーション(笑)は、前列に例の三人連れ、中列右側に私、左に山崎さん。
幸は一人、後から付いて来ていた。

なのでたぶん、前の三人と私ら三人が一緒のグループだと思ったのかもしれない。

前から歩いてきてすれ違いざま手を出してきたのは二本差。
四、五人居たかな?
言葉つきからこの辺の人間でないことはすぐに判った。

とっさに山崎さんが私の腕を引いてくれたのだが、それより先に後から幸が、手に持っていた福笹で、飛んできた相手の手を払ったんである。

そこまで、一瞬の出来事だった。

「うっ!」

と、男が立ち止った。
自分の手を見ている。
笹の葉で切ったのかも(単にそのアピールだけかもしれないけど・笑)。

「あ、せっかくの福笹、汚しちゃったかもー」

幸ってこんな時には意外と気が強い。
挑発とも取れるこの一言で田舎侍どもが気色ばんだ。
更に畳み掛けるように、

「すいませんね。私はこの子に悪戯しようと思っただけなんで。間合いが同じだったようだ。失礼致しました」

覆面の中で薄笑いを浮かべたまま、相手から視線を外さぬままに会釈をした。

「貴様、そんな言い訳が通ると思うのか!被り物を取れ!無礼であろう」

まだ女とは見破っては居ないようだったが、それでも年若いのを舐めているのは判った。

この時点で山崎さんがまあまあと間に入っては来たんだけどね。
でも私はムカっ腹が立っていたので、

「無礼ですって?聞いて呆れるわ。通りすがりに人を殴ろうとしたくせに。無礼はそっちでしょ?」

「なんだと?」

「幸、マフラー取んなくていいからね」

こういう状況を、ケツをまくると言う(笑)。

「もちろんそのつもりー」

緊迫した状況に、間延びした返事が頼もしかったり(苦笑)。

すると、相手の・・・ダサダサの縞on縞コーディネイトのおじさんが、私を無視して幸に話しかけた。

「貴様、この女に雇われているのか」

相手の男は、幸のことを私の雇われ用心棒かなんかだと思ったみたい。

「いーえ、全然」

と、幸が答えると、

「ではイロか」

薄笑いを浮かべたではないか。

幸と顔を見合わせて大爆笑しましたとも!
可笑しい!
もうダメ!
喧嘩する気まんまんだったけど、可笑しくって話になんない!
手を叩いて笑ったよ。

でも私たちが笑い転げれば笑い転げるほど、相手の顔は真っ赤になって行き、

「おのれ・・・!」

刀の柄に手を掛けた。
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